ある医療過誤事件が結審した。体調を考慮せず、無理なリハビリ訓練をつづけたために筋筋膜性疼痛症候群に罹患させ、発病後も診断・治療を怠り、より重症化させたのではないかという事案である。
先にトミーが「あちらにおられましたよ」で紹介した案件。その日は原告本人、相手方病院の理学療法士と主治医の証人尋問がおこなった。トミーは剣道の気合いもかくやという迫力で証人を追及し、おおくのポイントを獲得した。
結果がでたら(勝訴したら)、またお知らせしたい。判決予測についてはいろいろ書きたいことがあるが、相手方弁護士をはじめとする病院関係者や裁判官が本ブログを読んでいる可能性がゼロではないので、いまは自粛しておく。
きょう書きたいのは夫婦愛。原告は女性。複数の疾患をわずらい、目はほとんど見えず、特殊な車椅子がなければ移動もできず、全介助が必要な状態である。それを夫が献身的に介護している。
毎年約70万組が結婚、その3分の1が離婚し、残る夫婦の半分は仲がいまひとつという。そうしたなか、病気で目が見えず全介助が必要となったときに、配偶者をささえる連れ合いがどれだけいるだろう。週一回は離婚相談に応じる職業柄、悲観的にならざるをえない。
そうしたなか、本事件における夫婦愛は感動的。相手方病院入院中も医師が診断をつけられなかったときに、インターネットで検索して正確な診断名にたどりついたのだからすごい。
われわれ医療過誤をおおく取り扱っている弁護士であっても、自分で診断するとなるとそう簡単ではない。
(ただしK弁護士を除く。S病院を受診したものの、単なる腹痛だからと返されそうになった。でもブルンベルグ兆候(腹部を押したときではなく、離したときに痛みがある)があるから盲腸だと訴えて、念のため入院することになった。するとやはり盲腸だったらしい。)
日常的な介護だけでもたいへんだろう。治療は大分の専門医まで連れて行かれている。裁判の打合せは当事務所でおこなう。夫は車椅子を押して来られる。妻の状態に配慮しつつ、集めてきた文献を紹介しつつ、相手方書面への反論を協議する。
証人尋問の際も制約が多かった。しかし、夫がいろいろと世話をしてくれたため、大過なく終えることができた。
やはり暗闇でしか見えぬものがある。暗闇でしか聞こえぬ歌がある。
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