2016年2月23日火曜日

ヤドリギ(寄生木)



 福岡市美術館の裏で寄生木が金色に輝いていた。
 冬枯れの樹に葉を輝かすヤドリギは,強い生命のイメージを喚起するのだろうか。
 社会人類学の古典,フレイザーの『金枝篇』の金枝はヤドリギの枝のことだ。
 
 フランスでは,ヤドリギを新年に飾るらしい。
 先日読み終えた『失われた時を求めて』にも出ていた。
 「木々は固有の生命によって生き続けていて,葉が落ちた後でも,木々の命は幹を包む緑色のビロードの鞘の上や,ポプラの梢に点在する寄生木の球体の白い琺瑯質の中で輝く・・」(光文社・高遠弘美訳)
 
 わが国でも万葉の時代,寄生木を頭にかざすと,いく久しき寿を呼ぶと信じられていたようだ。
  あしびきの 山の木末の 寄生取りて
  挿頭しつらくは 千年寿くとぞ
                   大伴家持

 ケルト神話でも,幸福・安全・幸運をもたらす聖なる木で,非常に縁起がよいのだとか。
 こうして,ヤドリギの下では女子は男子からのキスを断らない風習が生まれたらしい。

 先日BSで,サンドラブロック主演の「あなたが寝ている間に」という映画を放映していた。
 そのなかで,この風習が紹介されていた。
 現代アメリカでもそのように信じられているということだろう。

 ちくし法律事務所も,寄生木のような存在でありたいと思います。

2016年2月21日日曜日

契約書がないんです・・・

民法のおはなし
このブログをお読みの皆さん
朝起きてから、今の瞬間までに、あなたはどんな契約をしましたか?

妻に朝食を作ってあげた
子どもを保育園に預けた
自動販売機で、缶コーヒー買った
職場まで、電車とバスに乗った
会社のために、一生懸命働いた
居酒屋で飲んで、カラオケにも行った

これって、全部、契約ですね
契約って、どんな内容でもよいという原則があります
(老婆心ながら、殺人契約とか、不倫の契約なんてのはだめですよ)
”こうして欲しいな”と言う人がいて、”そうしてあげるよ”と言う人がいれば、契約は完全に成立しています
口約束でいいんです
それどこか、自動販売機とは口もきいていないくらいですね

そうやって、私たちの日常は、ものすごい数の契約で成り立っています

懐かしい再会~トラブル発生
10代後半のある青年のお手伝いをしたことがありました
あれから15年
33歳 2人のかわいい子どもたちをもつお父さんになった彼が、事務所に来ました
一人前の大工として日々忙しくしている
なんて話を聞くと、まるでわが子の成長をみるかの思いになります

おっと、弁護士なんて因果な商売なひとのところに、そんな素敵な話だけをしに来られたはずはないですね
トラブル発生です
「いい仕事をしたのに、元請が代金を支払ってくれない!」
「契約書もないんです!」
とあわてた様子

さてさて、民法のお話からすれば、どうでしょうか。
元請から”仕事やってくれ”と言われて、元青年が”はいよ”って言って仕事したんだから、請負契約は完全に成立しています

神様がいてくれたら、これで、元青年の勝利確定

ところが
神様のいない悲しいこの世では、どうなるんでしょうか。

さてどうする?
まずは、弁護士として、元青年の代理人となって、相手方と交渉をすることができます

それでも相手方が応じなければ、裁判をするほかありません
裁判では、裁判官に、契約のあるなしを決めてもらうことになります
残念なことに、裁判官は神様ではなくて、私たちと同じ人間にすぎません
そこで、登場するのが「証拠」です
もちろん、必要事項が全部書かれている契約書があれば、元青年の勝利が確信できます
でも、契約書がなくても、あきらめることはありません
相手方とやり取りをした請求書、見積書、手紙、ファックス、メモ用紙
残っているありとあらゆるものを「証拠」として使うことができます
契約書がないというだけで、あきらめることはないのです

教訓ちくし法律事務所では多数の請負代金請求の事案を扱ってきました
逆の言い方をすれば、大工さんの世界は、口約束をひっくり返されるというトラブルが多い職場であるということですね
裁判で勝負をつけることができるとはいえ、できればスムーズに支払いをしてほしいところ
です
是非、契約書をもらうことを心がけてください

ついでに注意~時効請負代金は、3年という短い期間で時効にかかってしまいます
是非、早期の解決をお勧めいたします


2016年2月12日金曜日

離婚の財産分与 ~ 将来の退職金


離婚のご相談で、盲点となりやすいのが、将来の退職金です。

例えば、夫が57歳で、職場の定年が60歳。主婦の妻と離婚の協議をしている。
というご相談であれば、退職金は盲点になりません。
将来の退職金について妻への分与は認められるでしょう。
あとは、貯蓄などがあって、離婚時に、退職金の分与を清算できるのか?
それとも、退職金が支払われた後に清算ことにするのか?
状況に応じた交渉をしていくことになります。

では、夫が57歳ではなくて、もっと年齢が低かったら??
私が経験した事例では、夫が52歳(中小企業の会社員)だったのですが、家庭裁判所の調停委員は
  「うーん、分与を認めるべきかどうか、、、微妙・・・」
という顔をしていました。
最終的には夫婦の合意がうまく整いましたので、裁判所が結論を出すまでには至りませんでした。
実際の調停の現場での将来の退職金の取り扱いというのは、こんな感じなのです。

また、少し事例を変えてみましょう。
夫が52歳というところは同じでも、妻が不倫をして慰謝料の支払義務が認められそうだったら?
このときに、例えば、妻の側から、
  「将来の退職金は精算しなくてもよいので、
   その代わりに慰謝料の支払を免除(又は減額)してほしい」
と切り出すのは、かなり有効な手段だろうと思います。
調停委員も、話に乗ってくることが多いのではないでしょうか。
将来の退職金を現実に分与させるまでのハードルと、
分与の話を切り口に慰謝料を免除(又は減額)させるまでのハードルは、
違う(後者のハードルが低い)ということなのです。

離婚にまつわる法的な処理の実際というのは、本当にいろいろな糸が絡み合っています。
書籍やネット記事の知識だけで実際の現場にのぞむと、「えっ」と思うことも多いと思います。
そうならないようにするのが、私たちの仕事なのです。

弁護士田中謙二

2016年2月9日火曜日

これも、遺言っていえる?



 大切な人が亡くなるという出来事。
 残された家族の悲しみは、なかなか癒えるものではありません。
 誰にとっても大切だった故人。
 それぞれの家族(相続人)がその故人の思いを大切にしたいと考え、「故人の思いを実現したい。」と言われる場面をよく目にします。
 
 故人の思いは、受け手によって随分と違うもの。
 本当の気持ちは、生前によく話を聞いておくこと、法的なもの・遺産に関するものは、遺言書に書いてもらうことをお勧めします。
それが、相続人どおしの争いごとを防止することにもなります。
 そこで出てくる遺言書ですが、よく「やっぱり、公正証書でないダメでしょう?」と聞かれることがあります。
 たしかに、公正証書遺言であれば、検認(家庭裁判所における手続き)が不要ですし、有効無効が争われる確率は低いです。
 ですが、自筆証書遺言も、形式的な要件さえ満たしていれば立派な遺言といえます。
 自筆証書遺言の要件は、
   ・全文を自書すること
    (名前だけ自筆で、本文がワープロなどはNG)
   ・日付の記載があること
   ・署名押印があること
です。
  
 そして、遺言は、その解釈にあたっては出来るだけ遺言者の真意を探求すべきであると言われています。
ですから、一見メモのように見えるものでも、少々分かりにくい記載があっても、なるべく遺言者の真意を読み解くように解釈していくものです。
 故人が作成された文書がある場合、「これじゃぁダメでは。。」と簡単にあきらめず、ぜひ一度相談してみてください。
 私たちは、なるべく故人の思いに沿うような解決のお手伝いがしたいと思っています。