2013年6月10日月曜日

『タイガーズ・ワイフ』



本を読んでいて
信じられない話がでてくると微妙。

なんか子どもだましに
あっているような気にさせられるから。

村上春樹の小説が好きになれない人は
その辺につまずいているのではないでしょうか。

科学的な事実に基づいて書くことだけが
小説ではないという立場に立てるかどうかですね。

なぜ小説を読むのか?
という点にかかわってきます。

魂を揺さぶられるためだ,とするならば
必ずしも科学的な事実に基づく必要はありません。


テア・オルブレヒトの『タイガーズ・ワイフ』
(新潮クレスト・ブック)を読みました。

「2013年本屋大賞」の
「翻訳小説部門」第1位。

著者テア・オブレヒトは,ベオグラード生まれの
セルビア系の女性作家。

よくぞ
選んでくれました。


はっきりとは書かれていませんが
舞台は,紛争・分裂前後のユーゴスラビア。

旧ユーゴは,民族,宗教,政治体制等が
モザイクのように入り交じっていた。

セルビアの首都ベオグラードは戦略的拠点として
古代から現代まで140回も戦いの場となったという。

物語中でもくり返し
紛争の舞台になっている。

人々の心も戦争で
キズだらけになっている。


また旧ユーゴは東隣が
ルーマニアである。

あのドラキュラで
有名なお国柄。

ふるくからの迷信や幻想のたぐいが
色濃く残っている。


旧ユーゴは文明の十字路であり
現実と幻想の十字路でもある。


そのような場所で,主人公の女医が
祖父の個人史をたどる。

それがそのままユーゴの現代史や
迷信・幻想の世界をたどることにもなる。


祖父の人生は
主に二つの物語で構成されている。

「不死身の男」と
「トラの嫁」の物語。

前者は祖父が大人→子どもに戻り
後者は子ども→大人になる物語。


読みながら,なんどもガルシア・マルケスの
『百年の孤独』に似ているなぁと思いました。

解説を読むと,案の定,オルブレヒトが
最も好きな作家のひとりはガルシア・マルケスだそう。


さて,ちょっと信じられない話がいっぱいでてきますが
いちばんは,オルブレヒトが1980年生まれだということ。

すごい。
天才ですね。

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