『何者』
もういっぽうの直木賞は
朝井リョウさんの『何者』(新潮社)。
就活にとりくむ
6人の話。
「就活」という状況設定が
絶妙。
高校,大学までは
自分は自分でよかった。
でも就活となると,他者との比較のなかで
自分が「何者」かが問われる。
家族,知人,友人ではなく
就職先の評価を否応でも受けることになる。
それまでまったく他人であった人たちに
自分が何者であるかを説明しなければならない。
友人たちと情報を交換して協力しながらも
ときには抜け駆け的な行為も必要となる。
過去や現在の友人関係や恋人関係も
言動とその解釈に微妙に反映してくる。
そうなると,ひとつの言葉が
多様な意味をもつことになる。
50%は字義どおりの意味だけれども
あと30%,20%に違うニュアンスが含まれる。
侮蔑であったり,嘲笑であったり
あるいは,それらの疑いであったり。
こうなるとコミュニケーション達者でないと
ほんとうの会話ができない。
たとい4人で話をしているとしても
達者な人だけで会話が通じることになる。
にぶちんだと
会話においていかれる。
『等伯』が無骨な小説であったとすれば
非常に繊細な作品。
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