2013年2月5日火曜日
『等伯』
直木賞の存在,選考について
いろんなご意見をききます。
でも,ことしの2作は
なかなか面白かったと思います。
けっきょくのところ直木賞の価値も
受賞作がその時点の自分にあっているかどうかでしょうか。
まずは『等伯(上・下)』
(安倍龍太郎著,日本経済新聞出版社刊)。
辻惟雄さんの『日本美術の歴史』(東大出版会)
によると,等伯はこういう人。
長谷川等伯(1539-1610)は
永徳の向こうを張る桃山画壇の一方の雄であった。
かれは能登出身で,信春と称する地元の絵師として
仏画などを制作していた。
30歳頃上洛し,牧𧮾,周文らの水墨画法にまなび
永徳の新画法を吸収して独自の画法をつくりあげた。
智積院襖絵は等伯が子の久蔵ら一門を率いて
取り組んだものであり,かれの装飾画法を代表する。
かれは一方で室町水墨画の伝統を
時代の高揚した精神に重ね合わせた。
「松林図屏風」のような,日本水墨画の最高傑作
とまでいわれる作品を残した。
等伯がこれら偉業を達するまでの
求道の姿がじつに説得的。
戦国・桃山時代といえば
武将の側から書かれることがおおい。
しかし,絵師の側から時代をながめると
まったく違った様相を呈します。
信長も秀吉も
悪鬼のごとき存在です。
構図は山本兼一氏の『利休にたずねよ』
(PHP文芸文庫)とおなじ。
先鋭な美意識を武器に
圧倒的な武力をもつ権力者に対峙する。
その姿が
かっこいいです。
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