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2012年1月19日木曜日

「運命の人」(3) by.山歩きの好きな福岡の弁護士



 そろそろ「宝満山は婚活パワースポットだった!」
 みたいな軽い話題に転じたいのですが、「運命」の話をもうすこし。

 実は原作者の山崎豊子さんも毎日新聞に在籍し
 あの井上靖が上司でした。

 『あすなろ物語』、『しろばんば』、『風林火山』、『真田軍記』
 『敦煌』、『天平の甍』などを書いた小説家です。

 大森南朋さん演じる読日新聞(読売新聞)の記者・山部一雄の
 モデルはあの渡邉恒雄さん。

 といわれてもピンとこないかもしれませんが
 巨人の会長としてなにかと物議をかもしているナベツネさんです。

 政治家から金をちらつかされて、受け取りを断るのが弓成で
 もっとよこせというのが山部なんだそうです。なるほど。

 それぞれ毎朝と読日を代表する記者で
 社風というかスタイルというかまで表現されているのでしょうか。

 理念に忠実で、政治の暗部と正面衝突する弓成のスタイルが
 政治の陰謀や圧力に潰されていくのは残念。

 でも山部は弓成とよきライバルで
 後に、報道の自由を守るために弁護側の証人に。

 ここら辺はやはり器の大きさを感じさせます。
 われわれにはできない振る舞いではないでしょうか。

 与野党の政治家はもちろん、政治評論家・三宅久之さん
 元警察庁長官・後藤田正晴さん、タレントの大屋政子さんも原作には登場。

 われわれの立場でよりなじみのある名前はやはり法律家グループで
 検察官、裁判官らはいずれも名のある人たちがモデルになっています。

 ひとりだけ挙げるとすれば
 柳葉敏郎さんが演ずることになる弓成の弁護人・大野木正。

 「表現の自由を守るために闘う第一人者で
 弓成の弁護を通じて報道の自由を勝ち取ろうと支援する。

 知性と人情を兼ね備えた人物で
 夫婦の危機に陥る弓成と由里子を温かく支える」らしい。

 モデルは大野正男さん。
 弁護士から最高裁判事へ。

 私が関与した南九州税理士会違法政治献金事件における
 最高裁判事のひとりでした。

 最高裁弁論のときは「うん、うん。」と
 首肯しながら聴いてくださいました。

 南九州税理士会違法政治献金事件は、税理士会が会員から
 特別会費を強制徴収して政治献金したのは違憲だと訴えた事件。

 最高裁は税理士会のような強制加入団体において政治献金を
 することは会員の思想・良心の自由を侵害すると判断しました。

 ただし、われわれは大野さんが最高裁内でどちらの立場で
 論陣をはるのか図りかねていました。

 というのも、当時、団体の政治献金については
 二つの最高裁判決がありました。

 八幡製鉄事件と国労広島地本事件。
 前者は政治献金OK、後者はダメという結論でした。

 会社は政治献金してもいい、でも労働組合はダメ
 いかにも最高裁らしい判断ですね。

 それはともかく
 大野さんは、国労事件の際の代理人弁護士でした。

 つまり、労働組合は政治献金できるはずだ
 と論陣をはられたわけです。

 ですから、ひょっとすると税理士会も政治献金できるはずだ
 というご意見ではないかと心配したわけです。

 ですが、先の最高裁弁論の際のご対応を拝見して
 これは大丈夫と判断したわけです。

 このような運命の人たちの
 生き様が本ドラマのみどころでしょう。
 
 できればそれが
 光射す方へ向かっていればいいのですが。

               ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳

2012年1月18日水曜日

「運命の人」(2) by.山歩きの好きな福岡の弁護士



 きょうは早朝から西鉄電車が人身事故のため止まり
 ブログを書く時間があまりありません。

 時間がないときはプライオリティをつけ
 大事なことから処理する必要があります。

 でもブログを書くうえで
 大事なことってなんでしょう?

 大事なことを話していたのに、小さなことだけど気になるネタで
 話がズレてしまった経験がありますよね。

 またマスコミの報道をみていて、大事なことが議論されるべきなのに
 スキャンダルばかり報道されていると感じることもありますよね。

 西山事件はそんな経過をたどります。
 小さなスキャンダルに目を奪われ、大きなものを失ってしまう…。

 このとき、大きな問題としては
 つぎの2つの問題があったと思います。

 ひとつは、沖縄返還協定の裏に密約があったのかどうか?
 政府がないと説明した密約はほんとうになかったのか?

 もうひとつは、ジャーナリズムが政府のウソを追求する自由
 ひいては国民の知る権利が保障されるのかどうか?

 知る権利は、憲法21条が保障する表現の自由に含まれる
 重要な人権です。

 でも論争点はそこからズラされ、西山記者が情報を入手した方法が
 倫理的かどうかというスキャンダルにすり替えられてしまいます。

 一般の会社で株主に内緒で400万ドルないし3000万ドルもの
 裏金を相手方に支払えば背任、横領が成立する疑いがあります。

 また社長が株主に対し、そんな金を支払っていませんと
 株主総会でウソの説明をすれば、それもやはり大問題でしょう。

 一般の会社・社長・株主だろうと、国・政府・国民だろうと
 このことに違いはありません。

 政府がこのようなウソをついているときに
 そのウソをあばくのがジャーナリズムの役目でしょう。

 ジャーナリズムがこの役目を果たすことにより
 われわれの主権者・有権者としての知る権利も満足が得られます。

 これこそが大きな問題で
 大きな問題は大きな問題としてきちんと議論すべきだったでしょう。

 ところが取材の方法が倫理的でない!ダブル不倫だ!とかいわれると
 まんまとそれにひっかかっちゃうんですねぇ。

 「そんな下ネタ、いま関係ないでしょ!(別に議論しましょ!)」と
 誰か言ってくれなかったのでしょうか?
 
 この事件の後、毎日新聞は、本スキャンダルを理由とした
 不買運動により発行部数が減少、全国紙の販売競争から脱落。

 また以後、大手メディアの政治部が国家機密に関わる事項について
 スクープするということがなくなったらしい。

 ほんとうに大きな運命の事件
 天下分け目の事件だったんですね。

           ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳