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2012年5月25日金曜日

『都市と都市』 by.山歩きの好きな福岡の弁護士



 『都市と都市』チャイナ・ミエヴィル著
 (ハヤカワ文庫)。

 ある女性の他殺体が見つかり
 主人公が捜査を開始する。

 舞台は,1つの都市に2つの国家が
 併存する2重都市。

 これが
 表題の由来。

 3部から成り
 第1部 ベジェル

 第2部 ウル・コーマ
 第3部 ブリーチ。

 表題の2つの都市は
 このベジェルとウル・コーマ。

 もとのユーゴスラビアの辺りの
 架空都市です。

 われわれにはピンときませんが
 エルサレム,旧東西ベルリンのようなイメージ。

 ブリーチは,この2つの国家を分裂させたままに
 させておく連邦警察のようなもの。

 殺人事件の捜査はその2つの都市,さらにはブリーチ権力との
 隘路に入り込んでいきます。

 著者の構想力のすごさに
 恐れ入りました。

        ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳

2012年2月28日火曜日

『ドラゴン・タトゥーの女』 by.映画も好きな福岡の弁護士



 (外星人博物館@士林夜市)

 デヴィッド・フィンチャー監督の
 映画『ドラゴン・タトゥーの女』みました。

 やはり映像は本とはちがい
 迫力があります。

 ダニエル・クレイグのしぶさ
 スエーデンの冬の厳しさ・美しさ。

 暴力シーン,調査シーンなどの迫力
 いずれも映像ならではでしょう。

 主人公ミカエル(ダニエル・クレイグ)の問題
 パートナー調査員リスベット(ルーニー・マーラ)の問題

 ヘンリック・ヴァンゲルが彼らに依頼した
 ヴァンゲル家の「殺人事件」とそこに至る連続殺人事件

 これら3つの問題がよりあわされながら
 終盤へむかってもりあげていきます。

 そのためいささか長尺ですが
 飽きさせません。

 当日,当番弁護士の当番にあたっていたため
 ミカエルが狙撃されたシーンの前後を見損ねました。

 上記3つの映像内事件のほか,映像外の事件まで侵入してきて
 いやがおうでも緊張が高まりました。

 ただヴァンゲル家の「殺人事件」の容疑者たちや
 後半やや駆け足で,原作を読んでいないとついていけないかも。

 また暴力シーンの迫力についていけない人もいるでしょう。
 でもまあ試しにどうぞ。

             ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳

2010年10月21日木曜日

 マリアビートル



 伊坂幸太郎さんの最新作「マリアビートル」。
 「グラスホッパー」の姉妹編。

 昔の小説に出ていた人物に新たな小説で出逢うと
 旧知に会ったような気が。
 作品どうしがリンクしている、それだけでワクワクします(恩田陸さんとかも)。
 本歌(本家)はバルザックでしょうか?

 「マリアビートル」でも、「グラスホッパー」の登場人物たちに再会できます。
 虫つながり、虫仲間というところ。

 伊坂さんはあいかわらず毒があります。
 殺し屋多数に「どうして人を殺しちゃいけないんですか?」と問う中学生(王子)。

 「どうして人を殺しちゃいけないんですか?」
 中学生の問いに、大人はみなうまく答えられない。

 「そんなのあたりまえだ。」
 そう、私なら答えます。

 これまでに殺した側、殺された側の依頼を受ける機会がありました。
 どちらの側に関与するばあいでも、ほんとうにいやなものです。

 殺した側の国選事件(初めての殺人事件弁護)。
 ご遺族の許しがえられ、ご焼香させていただきました。
 筑後地方のある町までバスに揺られていきました。
 ご遺族はなにも言われませんでしたが、そのことが心に迫りました。

 殺した側の起訴前弁護。
 男女の三角関係がもつれた事件。
 事件の原因となった葛藤は解消されておらず揺さぶられました。

 殺した側の少年事件。
 少年の心の闇の深さ、理解しがたさに無力感。
 
 殺した側の弁護も気がおもいところ、殺された側の代理人はさらに気がおもい。
 それまでの表層的な人間関係が破られ、真の姿が立ち現れてしまいます。

 …

 さいしょ、マリアビートルの意味を知りませんでした。
 ビートルズの「レットイットビー」にあらわれるマリアさまのことか?
 そうおもいつつ読みすすみました。

 じっさい、真莉亜も登場。
 words of wisdomは話してくれませんが。
 
 この小説を読んで、マリアビートルとはテントウムシのことと知りました。
 ナナホシテントウこと七尾(Maria's Beatle)が困難に遭遇するたびに
 新幹線車内を右往左往するさまは
 テントウムシが植物のくきを行ったりきたりするようすにそっくり。
 
 テントウムシには、植物をずんずん登っていって行き止まると
 ぱっと羽をひろげて飛びたつ習性も。
 追いつめられ窮地に立たされた人間が
 ふだんは隠された力をはっきして光さす方へ飛躍する。

 「マリアビートル」は、そうした自由(光)へ飛翔するイメージを強く喚起させます。
 (登場人物たちの毒と影は、この光をきわだたせるための仕掛けでしょう。)

 困難な情況にあるかたがたが
 words of wisdomにめぐりあうこと
 あるいは、人間の隠された自己治癒力をはっきされること
 それらをとおして光さすほうへ歩んでいただきたい
 そう切に願います。