投票箱と民主政の過程をゆがめているのは、選挙区割による投票価値の不平等だけではない。企業・団体献金こそ問題である。
消費者被害に対し、そのような商売を規制する法律をつくるという選択肢Aと、それをつくらないという選択肢Bがあるとする。そのような状況下で、資金力のある企業・業界団体が政治家に自由に政治献金ができるとすれば、政治はつねに選択肢Bに流れてしまう。
政治を金で買うのであるから、その本質は贈賄である。しかし当該政党の政策に賛成しただけだといえば、あら不思議、贈賄ではなくなってしまう。
これまでにも贈収賄を疑わせる著名な疑獄事件が日本の政治を揺るがせてきた。ロッキード事件やリクルート事件などである。
企業・団体献金を規制すべきだという議論は、ずっと行われてきた。しかし、政治家にこの法律を作らせるのは、泥棒に刑法をつくらせるのに等しい。なかなか実行性のあるものができない。
いわゆる政治資金規正法がそれである。「規制」法ではなく、「規正」法というのが尻抜けとなっているミソである。政治に金は必要である、したがって規制はしない、しかし透明性を確保することは必要である、それが規正であるという。
そのような透明性の確保さえなされていないことは、この間の議論で露呈してしまっている。
司法の場においても、企業・団体献金の禁止の是非が争われてきた。一番有名なのは、八幡製鉄政治献金事件である。
企業が政党・政治家に政治献金を行うのは、国民の参政権を侵害するから、企業の目的の範囲外の行為であり無効であると争われた。1970年(昭和45年)、最高裁はこれについて有効であると判示した。
このときの最高裁大法廷裁判長は石田和外。かれは1969年(昭和44年)から最高裁長官であった。民主的な考えの裁判官を追放した結果が上記八幡製鉄事件ほか、その後続いた保守的判決の原因であるとされる。
石田は、いま「虎に翼」で松山ケンイチが演じている桂場等一郎のモデルらしい。1947年(昭和22年)、司法省人事課長になった。ドラマでは、寅子が裁判官になる途を開き、団子屋でともに団子をほおばる仲である。
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