2017年11月28日火曜日

生前の預金引き出しに関する相続・遺産分割事件(福岡家裁)


        (京都嵐山・渡月橋・琴きき橋跡)

 福岡家庭裁判所で,遺産分割調停でした。

 相続人は3人(うち2人が依頼人で申立人),遺産は大半が不動産・金融資産が少しです。

 遺産の分割について,共同相続人間に協議が整わないとき,また,協議をすることができないときは,その分割を裁判所に請求することができます(民法907条)。ただし,遺産分割事件はいきなり裁判(審判)を求めることはできず,まずは調停をしなければなりません(家事事件手続法257条)。これを調停前置といいます。
 
 主な争点は,①被相続人(遺産を残して亡くなった人)の生前に,同人から管理をまかされた預貯金を無断で多額にひきだしてしまったことをどう解決するのか,②現有遺産の大半が不動産であるときに,どのように分割するのかという2点です。

 ①について
 調停は,調停委員をあいだにはさんだ話合いなので,遺産の存否について争いがある部分は対象になりません。通常訴訟をおこして,そのような遺産が存在することを前提問題として解決する必要があります。しかしながら,それは双方にとってそうとうの負担となるので,一定金額を遺産にもちもどす和解的な解決が図られることが多いです。本件においても,相手方からそのような提案がなされました。

 ②について
 これについては,現物にこだわれば共有という解決もありますが,紛争を将来にもちこすだけになりかねません。
 いちばん簡単なのは,ひとりが全部を相続したことにして,その人が他の人に代償金を支払うという方法です。たとえば,不動産の価格が3,000万円であるとしてAが取得する,その代償としてAがBとCに1,000万円ずつ支払うというものです。本件でも,この方向が模索されましたが,Aが金策に失敗し,できませんでした。
 そこで,やむなく不動産を売却して現金に換え,これをわけるという方向を検討することになりました。

 遺産分割は細かい点を議論しはじめればキリがありません。親族なのですから,双方が大局的な観点から判断していければ早期の解決を図ることができます。

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