2017年11月21日火曜日
最近の離婚裁判における財産分与事情(福岡家裁)
(傾山三つ尾にむかう尾根上の紅葉)
ある離婚事件裁判の期日が福岡家庭裁判所で開かれました。当職は夫側の事件です(もちろん妻側につくこともあります。妻側のほうが実際に現金を手にする解決になることが多いので,当事者の満足が得られやすいです。)。
本件では,離婚すること,未成年の子どもの親権者をどちらにするのか,養育費の額についてはほぼ争いはなく,離婚慰謝料と財産分与について激しく争っています。
慰謝料については,夫婦間に暴力,暴言があったのかどうか,あったとしてその頻度や程度が問題になっています。これらの問題は,どちらに,どれだけの証拠があるかによって決着がつくことになります。
財産分与は,夫婦で協力して形成した実質的な共有財産を清算する制度です。離婚をした者の一方は,相手方に対して財産の分与を請求することができ,当事者間に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。ただし,離婚後2年間の期間制限があります(民法768条1項,2項)。
家庭裁判所は,双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して,分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定めます(民法768条3項)。そのため,われわれも一切の事情を主張し,立証しなければなりません。
夫婦がその協力によって得た財産が対象ですから,どちらかの特有財産は,この対象から外されます。なぜなら,夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は,その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とするからです(民法762条1項)。したがって,たとえば,婚姻前からもっている定期預金や,婚姻中に相続した土地などは,夫婦で協力して形成した財産ではありませんので,財産分与の対象財産ではありません。
しかしながら,そのようなものも含め,夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は,その共有に属するものと推定されています(民法762条2項)。民法の建前としては,夫婦別産制といって夫婦はそれぞれ別の財産を有していて,夫婦関係を維持するのに必要な限度で協力しあうことを予定していたようです。が,日本の現状では,そのような関係は水臭いものとされ,あいまいなまま夫婦関係を続け,離婚の際にあわてることが多いようです。たとえ水臭くとも,漫然と相手まかせにしないで,きちんと取り決めをし,できれば年次報告をしあうぐらいが,いざというときに安心です。
夫婦の収入を漫然と妻,もしくは夫まかせにしていると,離婚の際に財産分与の対象財産がどこに,いくらあるのか,さっぱり分からないということになります。この場合,相手方に対し,求釈明といって情報の開示をまず求めます。
そのような任意の開示でなかなか納得のいくようなものが示されなかった場合,次に,調査嘱託という制度があります。すなわち,裁判所は,必要な調査を官庁若しくは公署,外国の官庁若しくは公署又は学校,商工会議所,取引所その他の団体に嘱託することができるとされています(民事訴訟法186条。なお,離婚訴訟は,人事訴訟法であり,人事訴訟法というのがあります。しかし,人事訴訟法は,民事訴訟の特例等を定めているだけなので,基本的には民事訴訟法によることになります)。これにより,相手方の金融資産が所在する金融機関に対し,調査を行うことができます。しかし,これも全国すべての金融機関に対する,いわゆる探索的な調査はできませんので,調査をすることについての一定程度の根拠は必要になります。
このような調査の結果,対象財産の全貌(と思われるもの。当事者がなお納得されないこともありますが,証拠裁判主義の立場からやむを得ません。)が判明すれば,あとはその分与の程度ですが,2分の1ずつ分けることが一般的です。
そうなれば,訴訟も一区切りを迎え,裁判所が和解案をだすこともありますし,和解解決が難しければ,人証の取調べ(証人や本人たちの尋問)をおこなっていくことになります。
その結果に基づき,ふたたび和解の勧試がなされ和解が成立することもありますし,当事者が納得されなければ判決という運びとなります。
H.U.
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