ジェニファー・ジョーンズからメールが来た!と言われてピンとくる人はすくなかろう。残念ながら。実際、事務所の秘書さんたちに言ってみたが、みなさんどうリアクションを返していいか戸惑っていたようだ。
RI会長とは、ロータリー・インターナショナルの会長のことだ。ロータリーはアメリカのシカゴで発祥したが、いまや全世界的な組織に成長している。その会長であり、女性会長は史上初である。
そのこと自体すごいことであるが、われわれにとってジェニファー・ジョーンズといえば、映画「慕情」の主演女優である。ジェニファーは東洋ぽさのあるチャーミングな女優さん、「慕情」は朝鮮戦争前の香港を舞台にした悲恋映画。
アメリカ人新聞記者(ウイリアム・ホールデン)と大陸から避難してきた中国人女医(ジェニファー・ジョーンズ)の二人が主役。かたや合理主義者。かたや医者で欧州人の血が半分流れながらも、半分は中国人の血が流れているため、伝統や古くからの言い伝えを信じている。
あるとき、デートで裏山に登ると、ウイリアムの肩に蝶がとまる。かれにとっては単なる自然現象にすぎないが、ジェニファーにとっては「幸せのしるしよ。」。大きく言えば、「文明の衝突」である。
ウイリアムは蝶を逃がしてしまう。時勢は朝鮮戦争へ。ウイリアムはその取材のため戦地へ。そして帰らぬ人となってしまう・・・。
大学生時代、部活で「みんなで歩こう50キロ」という催しがあった。わが大学だけでなく、西南、福大、福工大、福女、筑女など近隣の大学を巻き込んだ大きな行事だった。
たしか6、7人グループで歩いていたと思うが、一人のザックに蝶がとまった。すると、いつもは無粋なことしか言わないk先輩が「幸せのしるしよ。」と言った。それだけで、参加メンバーにはそれが「慕情」由来のセリフだと言うことが分かった。
当時はセンターシネマやテアトル西新など名画座が福岡市内にもあり、名画が繰り返し上映されていた。ヒマな大学生は好んで映画館で時間をすごしたものだった。しかし、ビデオやDVDの普及により、名画座は廃館に追い込まれてしまった。
いまや、われわれが共有していた映画文化は失われてしまった。かくて、せっかくジェニファー・ジョーンズから来たメールも、その価値を共有されぬままとなったのだった。
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