ラベル ケンタウロス の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ケンタウロス の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2011年2月8日火曜日

 C型肝炎とケンタウロスと射手座



 弁護士をはじめてからすぐにお手伝いしたのは
 水俣病の裁判でした。

 被害者は、汚れた工場廃水が原因であることは分かっていたので
 対策をとることができたと主張しました(汚悪水論)。

 国や企業は、原因物質が工場廃水中のメチル水銀と確定するまで
 対策をとることができなかったと反論していました(メカニズム論)。

 薬害肝炎でも事情はおなじ。

 C型肝炎はウイルス(HCV)が発見されるまで
 血清肝炎・輸血後肝炎とか、非A非B肝炎と呼ばれていました。

 被害者は、血清肝炎の時代から対策をとることができたと主張し
 国や企業は、HCVが発見されるまで難しかったと反論しました。

 C型肝炎ウイルスが発見されたのは1988年
 アメリカのカイロン(Chiron)社によってでした。

 HCVの発見は薬害肝炎の発生・拡大を防止するのに必要ありませんが
 C型肝炎の病態の解明や治療薬を開発するのに役立つことは当然です。 

 ところで「ケンタウロス」の主人公は高校教師コールドウエルと
 ギリシャ神話のケンタウロスのハイブリッド。
 
 物語の途中で、いつの間にかケンタウロスになったり
 いつの間にかコールドウエルに戻ったり。

 ケンタウロスは人間と馬のハイブリッド
 人間の上半身+馬の首から下の胴体という姿をしています。

 小説&映画「ハリー・ポッター」の
 「賢者の石」や「不死鳥の騎士団」に出ていたアレです。

 馬優位か人間優位かでわかれるのか、ケンタウロス族にも2系統あり
 好色で酒好きの暴れ者の一族と、そうではない賢者と。

 「ケンタウロス」の主人公は後者、医学の祖とされるケイロン
 と高校教師とのハイブリッド。

 ん?ケイロン(Chiron)?どこかで聞いたことがあるような?

 そう、HCVを発見したカイロン社は医学の祖ケイロンに因んで
 名付けられたものだそうです。 

 ケイロンも医術の神アスクレピオスや
 アキレウスなど数々の英雄を教育した教師でした。

 物語のなかでも、ケイロンは薬剤師としての知識を
 生徒たちを教えています(第3章)。

 乱暴なほうのケンタウロスたちが婚礼の宴から花嫁を盗みだそう
 とした際に、ケイロンはとばっちりを受け毒矢で負傷します。

 型破りの弁護士と名前が一緒のために、別のおとなしい弁護士が
 とばっちりを受け苦しむようなものでしょうか。

 ケイロンは不死のため、毒矢のキズの痛みに苦しみながら
 治るあてもなくずっと世界をさまよいます。

 他方、主人公の子はピーター
 やはりギリシャ神話のプロメテウスとのハイブリッドです。

 プロメテウスは人類のために天の火を盗みだしたため
 カフカスの山頂に張り付けにされ、生きながらにして毎日肝臓を
 ハゲタカについばまれる責め苦を強いられました。

 ケイロンは身代わりとして子の罪を引き受け
 死にたいと願い出ます。

 神々は彼の願いを聞き入れ
 ゼウスは彼を輝く射手座の星にすえました。

 C型肝炎ウイルスのせいで毎日肝臓を痛めつけられていた患者らに
 カイロン社がHCV発見をもたらした話としても読めますね。
 

2011年2月7日月曜日

 春の緑とリスとピツァ



 春の話題をもうすこし。

 北海道は洞爺湖の北に立つ百名山、後方羊蹄山(蝦夷富士)に登り
 倶知安・半月湖へくだる森でのことです。

 エゾリスが樹から降りてきて、山道にちょこんとすわって(ノル・ウェイ)
 エゾマツの実をついばみ、食べ終わると去っていったことがありました。

 まるで遠来の登山者に寸劇を披露して去ったという感じ
 北海道のリスは芸達者でもてなし上手だなぁと感動しました。

  今僕の前に座っている彼女はまるで春を迎えて世界にとびだしたばかりの
  小動物のように瑞々しい生命感をほとばしらせていた。

                 (村上春樹「ノルウェイの森」第四章)

 緑のことを思い浮かべると、羊蹄山のエゾリスのしぐさを思い出します。
 さてそんな緑が父を亡くしたあとのデートでのことですが…。 

  僕がよく行くピツァ・ハウスに彼女をつれていって生ビールとアンチョビの
  ピツァを注文した。僕はそれほど腹が減っていなかったので十二ピースの
  うち四つだけを食べ、残りを緑が全部食べた。

                 (村上春樹「ノルウェイの森」第九章)

 緑が残りを全部食べたのは、お腹が減っていたからでしょうか
 それとも、ほかになにか意味があるのでしょうか?

 物語のはじめのほうに僕が好きな本が紹介されています。

  18歳の年の僕にとって最高の書物はジョン・アップダイクの
  「ケンタウロス」だった…。

                 (村上春樹「ノルウェイの森」第三章)

 「ケンタウロス」は現代アメリカの田舎町の高校教師の親子愛を
 ギリシャ神話をベースに、あるいは、混交させながら描いたもの。

 そうであれば、緑と僕のピツァのエピソードも
 ギリシャ神話をベースにしているはず…。
 

2010年12月19日日曜日

 僕はオイディプス王?


 
 「運命に立ち向かう」のなかで、「ノルウェイの森」の
 僕が神話上のオイディプス王で、緑はエレクトラだといいました。

 ほんとうにそのような読みでいいのでしょうか?
 この読みを支持する証拠があります。

 たとえば、僕と直子はこんなやりとりをしています(6章)。

 「こんな風にしてるとなんだか昔みたいじゃない?」
 と直子は言った。

 「あれは昔じゃないよ。今年の春だぜ」と僕は笑って言った。
 「今年の春までそうしてたんだ。あれが昔だったら十年前は
 古代史になっちゃうよ」

 「古代史みたいなものよ」
 
 それから僕が読んでいた本
 18歳の年の僕にとって最高の書物はジョン・アップダイクの
 「ケンタウロス」だったとあります(3章)。
 
 ケンタウロスは、ギリシア神話に登場する怪物
 首から下が馬、首から上が人間のハイブリッドな姿をし
 好色で酒好きの暴れ者です。

 小説や映画によくでてきます
 「ハリーポッター」にも出てきました。

 登場人物が2つのもののハイブリッドであることは
 本小説の重要な仕掛けです。

 後半(11章)、僕は自分がおかれた状況について
 迷宮になげこまれたようだと嘆いていますが
 そこにはやはり牛頭人身の怪物ミノタウロスが。

 ジョン・アップダイクの小説は
 ギリシア神話を下敷きに描く田舎町の高校教師の悲喜劇。

 高校教師はケイロン(ケンタウロス)、美しい女教師はアフロディテ
 校長はゼウス、ケイロンの息子はプロメテウス。

 ケイロンは、医学の祖、数々の英雄を教育した賢者で不死
 アフロディテは、愛と美と性を司る女神 
 ゼウスは、主神たる全能の存在、雷を司る天空神、神々の王
 プロメテウスは、天界の火を盗み人間に伝えたとされます。

 表面上は、アメリカの田舎町でおこる高校教師の悲喜劇は
 一枚めくれば、オリンポスの神々の叙事詩でもあるわけです。

 こういう手法はジェイムス・ジョイスの「ユリシーズ」をはじめ
 西洋文学では一般的な手法。
 (欧米か!)

 そもそもエディプス・コンプレックスという精神分析学上の呼び名も
 この手法のひとつ。

 「ノルウェイの森」もこのことを踏まえて読む必要があり
 僕はオイディプス王でもあり、緑はエレクトラでもありそうです。