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2012年12月13日木曜日

64(ロクヨン)






『64(ロクヨン)』(文藝春秋)
横山秀夫さんの新刊。

64といっても
昔懐かしいゲーム機ではない。

昭和の終わり,64年に発生した
誘拐殺人事件の警察内の符丁だ。


『陰の季節』,『動機』などとおなじく
D県警を舞台とする警察小説。

『クライマーズ・ハイ』などとおなじく
組織の不条理のなかで生きる個人を描く。

組織も地方新聞社ならぬ
警察組織ともなると,不条理もハンパでない。

警察庁と地方警察,警務と刑事,キャリアと現場
組織内組織どうしがギリギリと音をたててきしむ。

織田裕二主演の映画『踊る大捜査線』とおなじ
だけど,まったくちがう話題かと思うほどリアル。


きのう朝,兵庫県警の留置場で
連続殺人の容疑者が自殺した。

ふつうなら,う~ん
真相が究明されず残念というところ。

しかし,この小説を読んだあとなら
それにとどまらぬ問題の構造がくっきりと理解できる。


この小説のミソは
主人公が警察組織の広報官だということ。

内部の争いだけでなく
外部との争いの潮目でもあるわけだ。

記者クラブ,マスコミ,犯罪被害者との間に
虚々実々の攻防が繰り広げられることになる。

ここらへんは
地方紙の記者出身の著者ならでは。

犯罪被害者,加害者との折衝も
広報官として立場ゆえ微妙。

他方で妻や娘との問題も抱えており
内憂外患。それがいっそう緊張をたかめる。


一気に読める,もっと読みたくなる
すばらしい作品だ。

2012年9月5日水曜日

『鍵のない夢を見る』,福岡県の弁護士事務所のブログ



 辻村深月さんの
 『鍵のない夢を見る』(文藝春秋)

 直木賞(第147回)受賞作
 半歩遅れてよみました。

  「仁志野町の泥棒」
  「石蕗南地区の放火」

  「美弥谷団地の逃亡者」
  「芹葉大学の夢と殺人」

  「君本家の誘拐」
 という,5作の短編集。

 「望むことは,
 罪ですか?」

 「岐路に立つ,
 5人の女達」

 「恋愛,結婚,出産。
 普通の幸せ,ささやかな夢を

 叶える鍵を求めて
 魔が差す瞬間」

 「どうしてだろう,と
 歯を食いしばる。

 どうしてだろう。
 私には,

 どうしてこんなものしか,
 こんな男しか

 寄ってこないのだろう。」
        ー「石蕗南地区の放火」より

 以上が,オビに書いてあるコピー。
 さすがこれだけで,なかみをほぼ言い当てています。

 泥棒,放火,逃亡者,殺人,誘拐
 いずれも犯罪です。

 「望むことは
 罪ですか?」

 「望むこと」=「夢」
 それがなぜか,鍵のない犯罪になってしまう…。

 なかで好きだったのは
 「仁志野町の泥棒」でしょうか?

 たしかに,子ども時代
 自分のせまい世界はこんな感じでした。

 そこにときどき大人の世界が侵入してくる
 それもこんな感じでしたね。
 
 さすが作家さんです。
 よくこんな表現ができるもんです。

 表題どおり,「鍵のない」×「夢」の話ばかり。
 読後感はおもいですね。