2019年1月18日金曜日

松と梅のめでたさ


 成人式は能楽師・今村嘉太郎さん主催の能楽新春コンサートにいってきました。新年を言祝ぎ,とても晴れやかで楽しい会でした。

 演目は,『高砂』,『老松』,『東北』など。いずれも松や梅がでてきて目出度い,新年の門出にふさわしいもの。江戸城では正月,必ずこの3曲を演っていたそうです。

 『高砂』は結婚式の定番なので,みなさんご存知でしょう。相生の松によせて夫婦愛と長寿を愛で人生を言祝ぐめでたい曲です。ワキは九州阿蘇宮の神官ですから,九州とゆかりがあります。舞台は播磨国の高砂の浦。高砂の松と住吉の松の精がでてきます。松は冬でも枯れず緑であることから,人は古来,その生命力に憧れ,あやかりたいと考えてきたんですね。

 『老松』は,地元太宰府ゆかりの曲です。福岡県民ならずとも,大宰府にながされた菅原道真公を追って京都から飛んできた「飛梅」の話はご存知でしょう。天満宮のむかって右手にいまも花を咲かせていますね。昨日書いた原田マハさんのトークショーにでてきた猫の名も「飛梅太」でした。飛梅の話にはつづきがあって,松がそのあとを追ってきたのです。その名も「追松」。曲名では『老松』となっていますが,「追松」と表記したほうがもとの話とあいやすい。高砂は松と松のカップルでしたが,この曲では梅と松のカップルです。梅もまた冬のさなかに,他の花に先駆けて花を咲かせるので,生命力,さきがけとしての魅力,凛とした姿勢,希望などを感じさせます。松ととも古来愛されてきたゆえんでしょう。

 『東北』(「とうほく」ではなく,「とうぼく」と読むそうです。)は,前2曲とちがい,九州とのゆかりはありません。筆者はむかし岸和田に住んでいたのですが,そちらとゆかりがあります。岸和田はむかし和泉国と呼ばれていました。百人一首のなかに,和泉式部という女流歌人がいることはご存知でしょう。式部は夫が和泉守だったことから,和泉式部と呼ばれるようになったそうです。岸和田には「和泉式部ゆかりの恋の淵」なるものがあります。

 さて式部は,これまた有名な中宮彰子につかえていました。藤原道長の娘で,『源氏物語』を書いたことでも有名な紫式部もつかえていました。道長の没後,彼が建立した法成寺の東北に建てられたのが東北院です。その庭には,和泉式部が手植えした梅があります。その名は「軒端の梅」。

 謡曲『東北』には和泉式部の霊があらわれます。式部は歌舞の菩薩になっています。生前の思いでを語り,和歌の徳,仏教のありがたさを説いて舞をまいます。

  あらざらむ この世の外の 思ひ出に
        今ひとたびの 逢うこともがな

                       和泉式部

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