2025年6月11日水曜日

残雪の槍ヶ岳(3)横尾

 

 徳澤園の外れには結界のように清流が流れている。この結界を渡ると、人界からもう一段山に足を踏み入れた気分になる。


 結界の先の森に、またニホンザルの群れがいた。子ザルたちにとって冬は過酷で、命を落とす個体もいる。ようやく春を迎えたが、いまだエサが乏しいのか、あまり元気がないようだ。


 登山道は森の道から河原の道に変わる。梓川に沿って北上する。豪雨時の氾濫を懸念してだろう、もう何年も河川改修工事をやっている。


 横尾山荘まえ。徳澤から1時間、バスセンターから3時間。一休み。ここまでは許可車が進入可能なので、まずまずのサービスが受けられる。

 ペットボトル飲料などの物価もそれほど高くない。ここから先は人力(歩荷)、あるいはヘリコプター代の運搬費が嵩むので、物価が急上昇する。

 この山荘でお世話になることも多いが、きょうは早朝に出発することができたので、もう一段先へ進む。


 横尾大橋。向こうは屏風をひろげたような屏風岩。左手に黄色と赤の服を着ているのは、遭難対策協議会(遭対協、もしくは長野県警)の人たち。屏風のように登山者たちを危険から守っている。

 横尾はY字路になっている。左に進み、横尾大橋を渡ると涸沢・穂高連峰方面。右に進み、梓川をさらに溯上すると槍ヶ岳方面である。涸沢方面のほうが人気で、登山者の7割くらいは左に進む。

 横尾から先は冬山装備がなければ、先へ進めない。うかつな装備で進もうとすると、遭対協の人に止められ、計画の中止を求められる。

 前日涸沢ふきんに30センチメートルの積雪をみたということで、トレースが消え道が分からなくなっていること、雪崩の危険など厳重注意を受ける。 


 注意をありがたく拝聴し、槍ヶ岳方面に足を踏み入れる。厳重注意を受け、身がひきしまる思いだ。しばらく歩いて横尾大橋を振り返る。涸沢・穂高連峰の絶景を思いうかべ、後ろ髪をひかれつつ。


 梓川上流部。透明度がたかく、限りなく透明にちかいエメラルドブルー。山体が花崗岩でできているため、不純物がすくないためだろう。 


 横尾から先、槍沢の雪渓の冷気の影響か、一面雪面となる。人との離合もガクンと減った。クマの目撃情報もおおい。徐々に緊張感が高まっていく。

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