2018年12月26日水曜日

遺産分割調停事件(解決)


(南アルプスのむこうに富士山)

 福岡家庭裁判所に係属していた遺産分割調停事件が解決しました。このケースは,両親の遺産を子どもたち(兄姉妹)3人で分割した事件です。
 こちらは姉妹から依頼を受けました。お一人が遠方にお住まいでしたので,コミュニケーションに気をくばりました。

 父親が先に亡くなり,母親が最近亡くなった事案です。本来,父親が亡くなった際,母親が2分の1,子どもたちが各6分の1(1/2×1/3)相続していました。金融資産(預貯金)については母親が相続していたのですが,不動産については分割が未了でした。

 母親が亡くなった時点で,民法上は,子どもたち(兄姉妹)がそれぞれ3分の1ずつ分割することになります。しかし,兄が両親と同居し,実家が農業をしていたことから,そうはなりませんでした。

 本件では主に特別受益(生前贈与)が問題になりました。姉妹に対し,生前贈与があったというのです。その一部については,当方も認めましたが,残りについては争いました。

 特別受益があるとなると,死亡時の(狭い意味での)遺産に特別受益相当額を加算したものが広い意味での遺産となり,それを3等分し,特別受益をうけた当事者は,そこから特別受益分を控除したものが実際の相続分となります。(例えば,相続人ABCで死亡時の遺産5500万円,Bの受けた生前贈与が500万円の場合,6000万円が広い意味での遺産となり,その3分の1にあたる2000万円を各自が相続することとなり,ただしBは特別受益分500万円を控除し,1500万円となります。ACが2000万円,Bが1500万円で合計5500万円になります。)

 他方,兄に対する生前贈与も問題になりました。母親が金融資産を承継したことから,その生前贈与が問題になりました。当方の依頼人としてはそれをはっきりさせることが目的のひとつでした。しかしながら,同居しておらず,情報が乏しいため,なかなか困難なところがありました。

 最終的には,生前贈与を考慮して,兄が田畑を取得する,金融資産を3等分することになりました。

 法定相続制度は,家督相続制度と異なり,平等な法定相続分を定めていることから,長男とその他の兄弟間の意識のギャップを生じることが少なくありません。本件もそれがなかったわけではないでしょう。しかしながら,全員が細かいところに目をつぶり早期の解決を図ることができました。

 調停には本人が出頭されるのが望ましいのですが,本件では当方の依頼人はいちども出頭しないで解決することができました。

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