藤村記念館。島崎藤村の生家跡にたつ。藤村の生涯、『若菜集』『夏草』『落梅集』などの詩集や『破戒』『春』『新生』『夜明け前』などの小説の作品解説がなされている。
『夜明け前』はあまりにも有名であるが、じつはあまり最後まで読まれたことのない作品なのではなかろうか。自身もなんどか挑戦したことがあるが、通読はかなわなかった。遅々としてストーリーが進まないから。
その読み方に触れた記事が面白かった。最初から読む必要はない、第1部下の9章くらいから読み始めて、面白くなったら最初に戻ればよいという。こんど試してみよう。
記念館受付では各作品の文庫が販売されていた。ほんとうは『夜明け前』を買いたかったのだが、セット販売で4冊全部買う必要があった。旅の途中でもあるし断念。
『藤村詩集』(新潮文庫)を購入した。「若菜集」「夏草」「落梅集」が合本されたものである。知っている作品も多い。
詩集の序
遂に、新しき詩歌の時は来たりぬ。・・・
われわれには普通となってしまっている近代詩歌、藤村が時代を切り開くにはこれほどの革新的な気概が必要だったのである。
初恋
まだあげ初めし前髪の
リンゴのもとに見えしとき・・・
高殿
とほきわかれに
たへかねて
このたかどのに
のぼるかな
かなしむなかれ
わがあねよ
たびのころもをとゝのへよ・・・
この詩は大学ワンゲル時代に山の歌として習い覚えた。藤村の作とは初めて知った。
小諸なる古城のほとり
小諸なる古城のほとり
雲白く遊子悲しむ
緑なす繁縷は萌えず
若草も藉くによしなし
しろがねの衾の岡辺
しろがねの衾の岡辺
日に溶けて淡雪流る・・
千曲川いざよふ波の
岸近き宿にのぼりつ
濁り酒濁れる飲みて
草枕しばし慰む
写真は一昨年末訪れた川中島の千曲川。小諸よりすこし下流である。
名も知らぬ遠き島より
流れ寄る椰子の実一つ
故郷の岸を離れて
汝はそも波に幾月・・・
写真はやはり一昨年訪れた伊良湖岬。ここに流れ寄った椰子の実を柳田國男が見つけ、その話をきいた藤村が詩にしたてた。
藤村は、尊皇攘夷思想にはじまった明治維新がいつのまにか西洋化に変容してしまったことについて、その変節ぶりを明らかにするために『夜明け前』を書いた。名も知らぬ遠き国々より流れきた多くの旅人たちを目にして、藤村ならどう考えただろうか。
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