2025年6月2日月曜日

久留米第一法律事務所創立50周年記念祝賀会

 

 久留米第一法律事務所創立50周年記念祝賀会に出席した。同事務所は馬奈木昭雄弁護士が1975年6月、福岡県の地方都市である久留米で創立された。

 わが事務所の創立は1984年4月であるから、9年先輩。地域に根ざし、住民とともに歩むという理念を掲げる地域事務所の大先輩である。

 馬奈木弁護士は、地域で人権課題を解決するだけでなく、水俣病裁判、じん肺裁判、廃棄物問題、有明訴訟など多数の国民的な人権課題も解決すべく運動の指導してこられた。

 50周年というのだから、すごい。馬奈木弁護士は83歳になられるという。その間、大病等も克服され、元気なお姿でご挨拶された。

 わが事務所の先代所長である稲村晴夫弁護士が久留米第一で5年間修行したことから、兄弟事務所である。当職も、弁護士登録直後から、水俣病裁判や牛島税理士訴訟裁判に所属し、困難な訴訟のたたかい方についてご指導いただいた。

 牛島税理士訴訟の最高裁勝訴判決は1996年であるから、もはや30年前のことになる。ひさしぶりに歓談をすることができて、楽しい時間をすごすことができた。わが事務所としても今後とも地域的課題のみならず、国民的課題にもとりくんでいかなければならないと決意をあらたにした。

2025年5月30日金曜日

能『道成寺』@大濠能楽堂

 

 能楽師の今村嘉太郎さんにお願いしてチケットを入手し、お能『道成寺』をみてきた。

 道成寺は和歌山県にある天台宗の寺院、山号は天音山。本尊は千手観音。安珍・清姫伝説で知られ、能だけではく、歌舞伎、浄瑠璃の演目にもなっている。

 伝説では、東北の僧安珍が熊野詣の途次、清姫の住まう宅を宿としたところ、清姫が安珍に恋をし、裏切られたと知るや大蛇となって安珍を襲い、道成寺の鐘のなかに逃げ込んだ安珍を鐘ごと焼き殺したという。


 能には主人公となるシテと文字どおり脇役のワキや、その他アイと呼ばれる役割があり、狂言方の人がつとめたりする。

 CG映画をみなれたわれわれが舞台演劇をみにいくと、場面転換や演出効果などいろいろお約束ごとがある。

 お能となるとさらにお約束ごとが多くなり、舞台上に笛や太鼓を演奏する人がいるし、お謡をうたう人たちもいる。さらに後見といって、シテの衣装替えを手伝ったりする人までいる。でもお約束ごととして見えないことになっていると思われる。

 お能を鑑賞する人口がすくないのは、内容・言語がむずかしいこともさることながら、これらのお約束が邪魔になっているのではないかと思う。

 能を鑑賞しはじめてしばらくは、これらお約束ごとが気になって、お能に集中できない。しかし、なんどかみているうちに、お約束ごとが気にならなくなってくる。こんかいはとても筋に集中することができた。

 『道成寺』はオーケストラでいうとフル編成の大曲で、舞台上にたくさんの演者が競演することになる。お約束が身についていないと、筋と関係ない他の演者の存在が邪魔して筋に集中できない。

 でもお約束が身についてくると頭のなかで整理がついて、筋と関係ない人たちの存在がみえなくなる。それで筋に集中しやすくなるのである。 


 道成寺を訪れたことがある(写真)。石碑に「鐘巻之跡」とある。大蛇が僧と焼き殺す際、鐘をぐるぐる巻にしたうえ、蛇身が炎となって焼き殺した。鐘巻とはそのことを指している。

 能の傑作は複式夢幻能という形式をとっていることが多い。複式というのは前場と後場の二場面からなるということで、夢幻能となるのは後場である。主役のシテである神や霊がワキのみる夢や幻のなかに現れる。それで夢幻能。過去の出来事を回想し舞い歌うことにより過去を浄化して終了することが多い。

 人は精神を患ったとき、過去を回想して整理しなおしたり、歌ったり舞ったりすることで癒やされるけれども、回想や歌舞音曲にはそうした効果があるのだろう。

 『道成寺』は複式夢幻能にはなっていない。寺僧たちが祈祷により調伏し、大蛇が日高川に逃げて終了となる。ロード・オブ・ザ・リングのようなドラゴン退治の活劇ふうである。

 安珍・清姫伝説に材をとるのであれば、清姫の悲しみに焦点をあてた複式夢幻能をつくりあげることも可能だったと思われる。そうならなかったのは、演じられた場所とスポンサーのちがいだろうか。

 金閣寺をつくった足利義満の御前でやる演目としては複式夢幻能がうけただろう。しかし、和歌山県の道成寺でやるとなると、複式夢幻能はいささか高度すぎて寺僧や地元民にはうけなかったのかもしれない。

 それで寺僧たちが活躍し、寺から悪者を追い出す活劇ふうにしたというのはうがちすぎだろうか。

 ※まったくのシロウト・個人の見解です。

2025年5月28日水曜日

ナチュラルセレクション(2)森林・自然セラピー

 

 森林セラピーというのがある。セラピーというのは治療とか療法とかいう意味である。森林を散策し、自然に触れると治療効果が得られるということである。

 このようなことはむかしから体感・実感としてあったと思う。近時、計測方法の進化により、リラックス効果、血圧の正常化、ストレスを感じると分泌量が増加するコルチゾール(副腎皮質ホルモン)の減少、免疫系のナチュラルキラー細胞の活性化などが測定できるようになっている。

 心身に疲れを感じたとき、いきなり薬物を頼るのはいかがなものか。まずは森林を散策して自然に触れ、リラックス効果、免疫効果を得るほうが望ましいだろう。

 人類は類人猿の時代はもちろん、600万年前に直立二足歩行をはじめてからも基本的に森林や森林ちかくで生活してきた。都市生活、テレビやパソコンに向かう生活はたかだかここ100年未満のことだ。だからストレスを感じる。森林を散策すると逆にリラックスする。

 さいきんでは森林セラピーの考えがさらに拡張・深化され、別に森林を散策しなくても、自然に触れていればリラックス効果があることが分かってきている。自然セラピーという。

 たとえば、プラスチックでできた櫛をつかうのではなく、つげの櫛をつかう。デスクのうえに木製品を置いて、ときおり触れてみる。それだけでもリラックス効果が得られるそうだ。

 これをナチュラルセレクションというと言葉が強すぎるけれども、われわれ人類は長らく自然のなかで暮らしてきたのであるから、不自然な生活ではなく、自然な生活を送る時間を増やしたほうがいいよねと思う。さいきんますますそう思うようになった。

2025年5月27日火曜日

ナチュラルセレクション(1)イソヒヨドリ


 しばらくまえに天拝山のソウシチョウ(相思鳥)について書いた。

 http://blog.chikushi-lo.jp/2025/04/blog-post.html

 もともとはインド、中国、ベトナム、ミャンマーなどに分布しているが、江戸期いこう持ち込まれ、日本で繁殖している。日本の自然環境に適合したのだろう。

 天拝山ではエサをやっている人もいるようだ。動植物が繁殖するうえで、人間に気にいられることも重要な要素である。


 さいきん街中をあるいていると、イソヒヨドリ(磯鵯)が美しくさえずっている(あまりよい写真ではないが、手持ちのカメラの倍率ではこれが限界)。ビルの屋上や電線などにとまって鳴き、ビルの谷間に美声が反響してとても美しい。

 https://www.youtube.com/watch?v=1D7bhJGU7dk

 みなさんもイソヒヨドリとは認識していないだけで、さえずりは聞いたことがあるのではなかろうか。

 名前のとおり、もともとは磯の崖の岩場などで暮らしていた。それがいまではビルの屋上、屋根の隙間、通風口など人が造った物に営巣して繁殖しているらしい。なぜかというと、磯の崖の岩場と環境が似ているからである。

 最も強い者が生き残るのではない、最も賢い者が残るのでもない、唯一生き残るのは変化に適合できる者である(C・ダーウイン)。

 地球温暖化、プーチン戦争、トランプ関税、AI技術の劇的進化、日本の少子高齢化、円安・物価高など、めまぐるしく変化していく環境のなかで、うまく環境に適応できたイソヒヨドリの美声にしばし聞き惚れた。

2025年5月23日金曜日

歩いて日本縦断!

 

 ①ちくし法律事務所のメンバー6人でウォーキング同好会を結成し、夜の散歩を楽しんでいること、②沖縄の南端から北海道の知床岬まで4850kmを歩く企画(Vitalityジャーニー)があり、去年6月の時点で853km歩き山口県を歩いていたことは、すでに報告した。

 ①http://blog.chikushi-lo.jp/2023/11/

 ②http://blog.chikushi-lo.jp/2024/06/blog-post_13.html

 このたび、メンバーの1人が4850kmを完歩し、知床まで到達した。わが事務所でフルタイム働きながら、3人の子育てまっさい中の女性である。どこにそんな時間と体力があるのか。すごい。パチパチ。

 ほぼ毎日2万歩あるいた計算になる。1000歩あるくのにおよそ10分かかるから、2万歩あるくためには3時間20分も歩かなくてはならない。

 1年間歩いてみればわかるが、雨が続くときもあれば、これからは猛暑日も続く。体調不良のことだってすくなくない。そうしたなか、毎日平均2万歩あるくのは並大抵でない。偉業といってよいだろう。

 先に書いたように、運動をつづけるのは難しい。それをグループで楽しむ、毎週ルーレットでコンビニの飲み物などが賞品としてゲットできるなどの工夫で背中を押してもらいながら、なんとか続けることができる。ぼくのばあい、血圧、中性脂肪の検査結果が正常値に戻るという効果もあった。

 それにくわえて、この歩いて日本縦断企画である。累計歩行距離がわかるだけでなく、沖縄、鹿児島、宮﨑、熊本・・・と各県を達成するごとに記念のバッチをもらえる。

 バッチをもらえるといっても、スマホのアプリ上のことにすぎない。しかし、各県を歩ききった名誉と達成感をえることができ、目でみて確認することができる。とてもよい企画だと思う。

 欲をいえば、各県の観光施設、神社仏閣や100名山に立ち寄るイベントなどでもてなしてもらえると、もっと楽しいと思う。が、月200円程度のアプリなので、あまりぜいたくもいえない。


 さて自分はというと、いま青森県を歩いている。全行程4850kmのうち、4328kmの地点である(今日時点)。あと522km。ふぅ。
 
 アプリ上部には岩木山が見えている。岩木山に登ったことは2回ある。1度目は2014年に100名山を達成したときだった。あのときの達成感も半端なかった。岩木山に励まされながらのウォーキングである。青森県は250kmだ。あと171km。

 青森のあとは広大な北海道がまちかまえている。全行程350kmである。幸い、いまからはよい季節である。北海道に梅雨はない。いざ。ヒグマやエゾシカ、キタキツネ、ナキウサギたちにであえるといいな。

2025年5月22日木曜日

日本人・ユダヤ人同祖論

 


 NHKの番組でダークサイドミステリーというのがある。ふだんはまず見ない。が、タイトルが「神秘の古代ミステリー徹底検証!日本・ユダヤ同祖論」だったので、つい見てしまった。

 https://www.nhk.jp/p/darkside/ts/4847XJM6K8/episode/te/MP1M81N4XL/

 なぜなら、今年の正月に諏訪大社を参拝した際、大社の祭りの責任者をつとめたことがあるというタクシーの運転手さんの話を聞いたから。彼によると、縄文時代、諏訪盆地にユダヤ人が移り住んできて、それが諏訪大社信仰のもととなっているという。

 「ああ、あれね。」とわかったかたには、わがブログの「ディープなファン賞」をさしあげよう。


 運転手さんの論拠は、記事にあるとおり祝詞とユダヤ語の共通性などだったが、詳しいことはもはや覚えていない。

 ダークサイドミステリーによると、同祖論の論拠はいろいろある。

 ①謎めいた「かごめかごめ」はヘブライ語の暗号か?
  「かごめかごめ」の歌詞がヘブライ語とそっくりだという。

 ②京都に古代イスラエル・ダビデ王をまつる神社がある?
  古代秦族は、ユダヤ12族のうち行方不明となったものの末裔であるという。

 ③「ダビデの星」が各地の神社にある?
    「ダビデの星」というのは△と▽をあわせて星形にしたやつだけれども、日本各地の神社にそれが飾られているという。

 ④赤い鳥居やこま犬の存在?
  
 「これらの共通点はとうてい偶然とは思えない。だから、日本人とユダヤ人はおなじ祖先をもつのだ。」これが古代ミステリーとしてネットや本で話題の日ユ同祖論である。

 番組にはヘブライ語の専門家が出演して、ヘブライ語との共通性を否定。片言隻句をとらえるという表現があるが、「かごめかごめ」の歌詞はどうやらその類のよう。その他の論拠についても、全否定。いちいち納得。

 つづいて歴史的検証。そもそも同祖論は明治期から。訪日した外国人が日本の結婚式を目撃して、「これってユダヤの結婚式とそっくりじゃん。」と同祖論を展開した。

 その後、時代の変化につれて隆盛したり下火になったり。論者たちがなぜ同祖論を信じたいかといえば、日本人のルーツを旧約聖書で基礎づけたいから。日本民族は神に認められた民族である、と。

 日独伊三国同盟が締結されると、ドイツに遠慮して下火に。ユダヤ陰謀論との関係も、つまみ食い的に信じたいところだけ信じる。みたいな。

 いまの科学水準からすれば、同祖論は遺伝子レベルで立証できるはずだ。

 しかし現状、ネット上でそうとう流布しているらしい。なぜなら、そのほうが楽しいから。たしかに、諏訪大社に参拝してきました!というだけより、諏訪大社はユダヤが起源らしいと書いたほうが、へぇ!?と興味をひきそうだ。

 が、まだ娯楽でそのような言説を消費しているうちはいい。しかし、自分が信じたいものを信じるという心性は危険。

 弁護士をやっていると、こういう心性の人によくでくわす。ただもう信じたいものだけを信じて生きている感じ。裁判制度は、これら盲信をディベートや客観的な証拠により排除していく努力のあらわれであるといってよい。

 こうした心性は自分のアイデンティティーの弱いところ、不安定なところに発しているという自覚が必要だろう。そうでなければ、ナチスのユダヤ人虐殺や関東大震災のときの朝鮮人虐殺のようなことをふたたびしでかしてしまうことになるかもしれない。

2025年5月20日火曜日

健康づくりのための睡眠ガイド2023

 

 加齢にともない睡眠力が減退した。若いころはいくらでも眠れた。休日など9時ころまで寝ていることが普通だった。しかし加齢に伴い、寝入りが悪くなり、途中で目が覚めることも増え、朝も5時をすぎると目が覚めてしまう。どうやら眠るのにも力が必要である。

 NHKでも、よい睡眠をとるための啓発番組をしょっちゅうやっている。むかしなら鼻もひっかけなかったが、いまは必ず録画してみるようにしている。

 といっても、内容は同工異曲である。なぜなら、いまのタネ本は「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」だからである(グーグル検索すれば、トップにでてくる。)。

 厚労省が音頭をとって、「健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会」が作成したものだ。2003年(平成15年度)に「健康づくりのための睡眠指針~快適な睡眠のための7箇条~」が策定されたのが皮切りで、ほぼ10年ごとに改訂されている。

 改訂されるということは、その時々で言っていることが違うということである。しかし、しかたがない。人類の知見は不完全であり、進歩するものだから。

 なぜ自分の流儀で好きなように寝てはいけないかというと、質・量とも十分でない睡眠は健康を損なうからである。

 睡眠時間が短いと、肥満、高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患、認知症、うつ病などの発症リスクが高まることが明らかになっている。睡眠時間5時間のグループ100人と睡眠時間6時間のグループ100人を10年ほど継続して観察し比較すれば、この点は明らかになるだろう。

 うちの相談者・依頼者も、うつ状態・うつ病のかたがすくなくない。対人トラブルなど大きなストレスを抱えて眠れなくなり、うつ状態・うつ病になるのだろう。またうつ状態・うつ病がさらにトラブルを引き寄せることにもなる。うつ状態・うつ病になると、難しい決断を要する紛争解決も困難になってしまう。

 もちろん個人差はある。が、質・量ともに十分な睡眠を確保することが、心身の健康を維持するためにも重要なようだ。

 ではどうすればよいか。高齢者、成人、こどものそれぞれで注意事項は異なるのであるが、高齢者の注意事項はつぎの3つ。

1 長い床上時間が健康リスクになるため、床上時間が8時間以上にならないことを目安に、必要な睡眠時間を確保する。

 眠れないからといって、早くから、あるいは、いつまでも、布団に入っているのはよくないのだ。血流が悪くなり、健康リスクを高めるのかもしれない。

2 食生活や運動等の生活習慣や寝室の睡眠環境等を見直して、睡眠休養感を高める。

 野菜の多い食事や適度な運動もたいせつだし、寝室の照明等にも気を配ろうということだ。

3 長い昼寝は夜間の良眠を妨げるため、日中は長時間の昼寝は避け、活動的に過ごす。

 短時間の昼寝がよいことも言われているが、30分未満にしたほうがよいそうだ。休日に外出しないと30分以上の昼寝をしてしまうこともおおい。30分以上昼寝していたら電流が流れて目が覚めるスマートウォッチを開発してほしい。

 生老病死。お釈迦様のころから生きていくうえで避けられない4つの苦しみである。老病のなかに睡眠が入ってくるとは驚きである。ま、生きていくうえで避けられないのであるから、できるだけうまくつきあっていくほかあるまい。