先に書いたように、顧問会社幹部にむけて社会保障制度のセミナーをおこなった。
http://blog.chikushi-lo.jp/2025/02/blog-post_4.htmlその準備をするなかで、日ごろ協力している事業について、社会保障制度のなかでの位置づけが再確認できたものがあった。いくつか紹介したい。
まずは家計相談支援事業。グリーンコープが福岡県や周辺自治体から依頼を受けておこなっている。
https://greencoop-fukuoka.jp/jiritsu/fukuoka/index.html
福岡県や周辺自治体が家計相談支援事業をおこなっているのは、生活困窮者自立支援法に基づく。
生活困窮者とは、就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者をいう。
生活困窮者自立支援法が制定されたのは2013年である。その背景には、生活感困窮者の増加がある。増加の原因には、つぎのような複数の複合的な要因があった。
①1990年代のバブル経済崩壊以降、2010年代までの長期的な経済低迷(失われた20年)
②経済低迷、経済のグリーバル化にともなう非正規雇用の増加
③2008年のリーマン・ショックによる世界金融危機に伴う非正規労働者の派遣切りや雇い止めの増加
④2011年に発生した東日本大震災の影響
⑤少子高齢化、晩婚化・非婚化による単身世帯の増加、一人親家庭の増加、世代間における貧困の連鎖、地縁・血縁によるつながりの希薄化、社会的孤立
こうした生活困窮者が「最後のセーフティネット」である生活保護受給に至る前に、「第2のセーフティネット」として支援制度を設けようとしたのが生活困窮者自立支援法である。
家計相談事業は、そうした支援制度の一つである。家計相談とは、相談者自身の家計を管理する力を高め、早期に生活が再生されることを支援する取組みである。
具体的には、①家計収支の均衡がとれていないなど、家計に問題を抱える生活困窮者からの相談に応じる。②相談者とともに家計の状況を明らかにして生活の再生に向けた意欲を引き出す。③家計の視点から必要な情報提供や専門的な助言・指導等を行う。
われわれ弁護士がお手伝いするのは、このうち専門的な指導等の一部である。つまり、多額の負債により家計収支の均衡がとれていないときに、負債整理を行うことにより家計収支の均衡を回復する。
やること自体は一般の負債整理と異なるものではない。しかし、生活困窮者自立支援法、家計相談支援事業の一端としておこなうとの自覚を持つことで、依頼人の背景事情により深く思いをいたすことができると思う。
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