2025年2月6日木曜日

ある交通事故損害賠償事件(争点は過失割合・勝訴的示談)

 

 今朝の西鉄二日市駅前。数年に一度という大雪が予報され、雪害への備えをするよう事前に繰り返された。が、福岡市内より雪をみることが多い二日市界隈でも、それほどの積雪をみることはなかった。

 天気予報の姿勢を批判する人もいるが、予想されたリスクに対し安全側(生命・健康等にとってより安全な行動を促す立場)で行動した結果、当該リスクが生じなかったとしてもやむを得ないと考える。お気楽な予報をして大惨事となるよりマシだから。

 さてある交通事故損害(物損)賠償事件が即決で解決した。依頼者の車が片側2車線の道路を走行していたところ、左車線を進行していた相手方車が当方車線に進路を変更しようとして、当方車の左側面に衝突したという事案。

 争点は過失割合・過失相殺率である。過失相殺とは、事故発生に対して過失の度合いに応じて損害賠償額を減額する制度である。過失相殺率は、基本的に相手方の過失が大きいものの、当方にも過失が3割あるとき、3:7であるなどと表現する。

 相手方の損害についても同様である。たとえば、過失相殺率3:7として、当方の修理代50万円、相手方の修理代30万円である場合、当方の修理代のうち35万円(50×0.7)を相手方が負担し、相手方の修理代のうち9万円(30×0.3)を当方が負担することになる。

 過失相殺率については、昔は直感的・場当たり的に解決がなされていた。しかし、いまでは「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」(東京地裁民事交通訴訟研究会編・別冊判例タイムズ)に基づいてほぼ解決がなされている。

 この本は、交通事故の発生状況ごとに細かく分類され、基本割合を定め、修正要素があれば修正するという体裁となっている。交通事故の発生状況とは、四輪どうしの事故なのか、四輪と歩行者の事故なのかとか、交差点の事故なのかそうでないのかとかである。 

 もちろん損害保険会社の担当者もこれに従っている。弁護士に頼まなくて、損保担当者どうしの話しあいで解決する例も多いだろう。


 本件交通事故の発生状況は「進路変更車と後続直進車との事故」に分類される。基本割合は当方30:相手方70である。損保担当者はこれで解決したいとの考えであった。しかし依頼者は納得がいかず、当職に依頼された。

 事故形態は動かせないようだったので、検討すべきは修正要素である。進路変更禁止場所であればー20、合図なしであればー20、初心者マーク等あればー10、相手方にその他の著しい過失があれば-10、重過失があればー20となっていた。

 その昔であれば、これらを立証することが著しく困難であり、基本割合で示談せざるを得なかった。しかし、いまはドライブレコーダーという強い味方がある。

 これを見分・分析してみると、夜間であり、移動車内からの撮影でもあって非常に分かりづらいのであるが、どうも横断歩道を通過しながらの事故であることが判明した。

 道路交通法30条は、追越禁止場所でなくても、交差点、踏切、横断歩道または自転車横断帯の手前の側端から30m以内の部分で、他の車両を追い越すために進路を変更したり、追い抜きをすることを禁止している。

 これにより進路変更場所での事故ということが証明され、当方の過失割合は30-20=10となった。相手方保険会社にその旨提案した結果、合意が得られ、過失割合10:90での示談となった。さらには、相手方が自車修理代の10%分も請求しないというオマケもついてきた。

 事故形態からして双方の修理代はそれほど高額なものではなく、上記20%の変動によりそれほど大きな金額の差を生じたわけではない。しかし、依頼者の喜びは大きかった。30%の過失から10%の過失となったことにより、自身の正義感に照らし、大きな満足をもたらしたのである。

 これまたその昔は、されどこれぐらいの金額差であれば、弁護士費用のことを考慮すると依頼できないということが多かった。しかしいまは弁護士費用特約というのがあって、弁護士費用も損保がみてくれる。

 かくて依頼者に弁護士費用のご負担をかけることなく、上記解決をみることができた。とても感謝された。めでたし、めでたし。パチパチ。

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