2024年9月30日月曜日

あるセクシャルハラスメント事案への対応

 

 顧問先の団体で、あるセクシャルハラスメント事案が発生した。顧問弁護士として、その担当委員会の委員に就任し、調査と処分決定に関与した。一般の民事事件や刑事事件よりずっと苦労したので、その苦労話を書きたい。

 守秘義務の関係で内容の紹介はできない。そのため話が抽象的で分かりにくいとは思うが、我慢されたい。

 われわれ法律家は、事実が固まるまでは、主張されている内容は嫌疑、加害者と名指しされている人物は容疑者にすぎないと考えている。それらが事実となり、加害者となるまでには審理や認否・証拠調べが必要である。そのように訓練されている。しかし一般人にとってこのようなことは初めての体験であり、なかなか難しい問題である。

 裁判であれば、訴訟法や証拠法が存在し、審理の進め方や証拠調べの方法が確立している。しかし一般の団体においてセクハラの存否を調べるとなると、そのような方法論も存在しない。どうのようにして事実を認定してよいのか迷う。ま、民事事件の証拠法を参照しながら、できるだけ真相を究明するほかなかろう。

 当該事案では容疑者が全面的に容疑を否認していた。そうなると、一般的には事実認定がとても難しい。

 幸い本件ではメールのやりとりが多数存在し、その存在や内容は客観的なものとして依拠してよいと思われた。主張されてた事実のなかには、もちろんメールが存在しない部分もあった。どこかの場所で容疑者が○○したというようなことである。これについては、被害者側が主張しているものの、容疑者が認めないのである。ここは抑制的に判断するしかないが、メールの内容に沿う部分は事実認定ができた。

 双方の証言を聴取した。これにより、メール記載の事実以外の事実についても一部認めることができた。かくて大部分のところで主張にそったセクハラ行為があったと事実を認定した。

 そして当該事実に基づく相当な処分を行った。処分の内容についても議論があった。刑事事件でいえば、いわゆる量刑の部分である。前例もないため、処分については軽いものから重いものまでとても広い幅が生じた。これもなんとか中取りで決することがきた。

 処分内容については、双方の反発も予想されたが、そのようなことはなかった。ひと安心した。しかし事件はおさまらず、容疑者がほんとうはこうだったなどと周りに話して回るなどして場外乱闘が続いた。

 ことほどさようにセクハラ問題の解決は難しい。やはり事が起こってしまってからでは遅い。その意味で、事前の研修が必要である。しかし事件の根は深く、そう簡単に意識や認識を変えられないところが難しい・・・。

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