2024年7月2日火曜日

新潟の旅(8)Bridge over Troubled Waterから、栄光の架橋へ

 

 荒海や佐渡に横たふ天の河 芭蕉

 旅泊に見る黒々とした日本海の荒海。その荒海の隔てるかなたには、順徳院・日蓮・日野資朝・世阿弥などの幾多の歴史を秘め、今また悲しい流人の島として知られる佐渡が島が遠く横たわり、銀河が白くその上にかかっている。空の二星も交会をとげるというこの夜、島の人たちはこの荒海に隔てられた家郷の人々をどんなに恋い慕いながら、あの星の橋を仰いでいることだろうと思えば、ひとり北海のほとりをさすらう自分の心もしめつけられるような思いがする。そうした人間の思いを包んで、夜の海はあくまでも黒く、銀河はあくまでも高く、天地の寂寥のきわみを呈示している。

頴原退蔵・尾形仂訳注『新版おくのほそ道』角川文庫による現代語訳。侘び寂びの境地からすれば、こういう訳になるのだろう。しかし、これではそのまえに置かれた文月やの句のウキウキした気分が十分に活かされていない気がする。

ぼくはどうしてももっとロマンチックに読んでしまう。この句を読むと、いつもサイモンとガーファンクルの「Bridge over Troubled Water」を思い浮かべてしまうから。

https://www.uta-net.com/song/270216/

「Bridge over Troubled Water」を思い浮かべてしまうとさらに、ゆずの「栄光の架橋」を思い浮かべてしまう。この曲は薬害肝炎九州訴訟の判決前夜集会においてみなで歌った思い出の曲である。

https://www.uta-net.com/song/19425/

薬害訴訟は判決で勝ってそれで終わりではない。勝訴判決を足がかかりとして、政治解決を目指さなければならない。そうした運動を進めるためには関係者が一致団結し、解決へ向けた世論づくりをする必要がある。そのため判決前夜、原告のみなさん・弁護団・支援者のみなさんによる「1000人集会」を企画した。

その際、みなの心をひとつにするため、なにか歌を歌おうとなった。さて何を歌えばよいのか?すると、ある原告の娘さんがこの歌を推したのである。それまでは知らなかったが、これほどピッタリの歌はない。

かくてこの句を読むと、家持の「かささぎの」の歌から「Bridge over Troubled Water」、そして「栄光の架橋」までが頭のなかで自動再生されるのである。

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