2012年4月11日水曜日
『傍聞き』 by.本も読書も好きな福岡の弁護士
さいきんなんか本格的な長編を読んでいないような
宮部みゆきさん,奥田英朗さん,伊坂幸太郎さん…
読者の期待にこたえてがんばってほしいですね。
このブログもミステリーとか海外ものがおおいので。
というわけで,きょうは平積みの短編
『傍聞き』(長岡弘樹さん,双葉文庫)。
ベテラン救命救急士の指示による
迷走の謎を解く『迷走』
何度注意しても聞く耳をもたない女性刑事の娘の
ふるまいの謎が明かされる表題作
消防士が体験した火事場での不思議な
出来事の謎を解く『899』
更生保護に取り組む女性にみせた元受刑者の奇妙な
行動の謎が明かされる『迷い箱』
以上4ストーリーからなる短編集。
いずれも謎解きと人間ドラマがからまって心地よいです。
コンピューターはいざしらず,われわれ人間は
おなじ話でも誰から聞くかによって得心ぐあいがちがいます。
AさんがBさんを説得するときに
直接説得しても,Bさんの心理的な防御をやぶるのが難しい。
そんなとき,わざとお隣のCさんに話をします。すると
それを隣で聞いていたBさんが説得されやすいという間接技。
裁判でも紛争当事者の供述はほぼ信用されません。
第三者的立場の証言が重視されています。
ちょっとちがいますが
証人尋問でもこういうことがあります。
核心となる話題については,わざと弁護人の質問からはずして
検察官や裁判官に訊かせるばあいがあります。
おなじ答えなのですが
弁護士が質問すると,どうしても作為がにじみます。
でも検察官や裁判官が訊いた答えとして
それが提出されると,なぜか信用できるような気がするわけです。
それにしても,この刑事の娘さん
よくできた子どもです。
ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳
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