2012年2月10日金曜日
『蜩ノ記』
オリンパス事件をみていると
会社の不正を暴き、是正することの困難を思い知ります。
巨額の損失を「飛ばし」という手法で10年以上隠し続けた末に
これを不正な粉飾会計で処理した事件。
スクープとイギリス人社長の早期解任をきっかけに明るみに出て
株価も急落、会長らは辞任、会社は上場廃止の瀬戸際に。
ちょうどそのころ、私のところにも
公益通報者保護法関連の相談がありました。
法は、公益のために内部告発した人を保護する趣旨ですが
実際には陰湿ないやがらせを受けているというものです。
現代社会においてすらこうですから
封建社会において藩の不正を正そうとするのは命がけ。
葉室麟さんの『蜩ノ記』(祥伝社)はそんな様を描いたもの。
さきごろ直木賞を受賞しました。
葉室さんは九州の人なので
豊後のさる藩が舞台(大分県の中堅企業といったところか)。
山本周五郎の『樅の木は残った』(新潮文庫)によく似て
汚名をきせられつつも、誇り高く生きる主人公の姿勢が気持ちいい。
時代小説ですが、藩の中枢をめぐる謎解きがプロットになっていて
ミステリ仕立てになっています。
そしてこれまた
主人公は蟄居(自宅謹慎)中ゆえ、身動きがとれません。
というわけで
きのうにひきつづきアームチェア・デティクティブ風。
ワトソン(狂言回し)役はやはり
不祥事を起こして懲戒処分中の檀野庄三郎。
懲戒処分中?そういえば、この次に紹介予定は
法坂一広さんの『弁護士探偵物語 天使の分け前』。
現役バリバリのときはそれどころじゃないけど、懲戒されて
ヒマになると、世の不正を暴く心構えとヒマができるのでしょうか?
『蜩ノ記』を読みながら最近、悪代官と越後屋の
「おぬしも悪よのう」みたいな場面を見ないなぁ、とか
「お許しください。あれ~。」みたいな場面も見ないなぁ
とか思いました。
時代劇や時代小説をながらく見ていないのだから
あたり前か?
いや、『武士の一分』とか『たそがれ清兵衛』とかにも
出てきませんね。
藤沢周平さんらが
時代劇をより清新なものに変えたせいなのかな?
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