2010年12月3日金曜日
「もののけ姫」とブナ林の命運
われわれ薬害肝炎弁護団にとって「もののけ姫」といえば
中山篤志弁護士によるカウンターテナーまがいの歌
(みなさまにお聴かせできなくてまことに残念)
なのですが、きょうはブナとの関わりについて。
SENGOKUの世がはじまろうとするころ
ヤマト朝廷に抵抗したエミシの長アテルイの末裔たちは
(アテルイについては高橋克彦さんの「火怨」をどうぞ)
奥羽山脈の麓の村でほそぼそと生きのびていました。
エミシの住まうの森と村は白神山地がモデル
いわばブナの森と村なんですね。
イケメンの少年アシタカは
村を襲ったタタリ神のイノシシに
死に至る呪いをかけられてしまいます。
タタリ神から自分が呪いをかけられた真相をくもりなき目で見定めるため
アシタカは、はるか西方へと旅します。
(手がかりはイノシシの体内から摘出した鉄の銃弾)
アシタカがたどりついたのはシシ神の森
そこには「鉄と銃」でシシ神と森を殺そうとする人間たちが。
(つまり、それが死に至る呪いの真相)
その人間たちと
シシ神を守ろうとする山犬一族&もののけ姫(少女サン)が
壮絶な戦いを展開。
アシタカはその戦いに巻き込まれ物語はクライマックスへ。
さて私のばあい、死に至る呪いとまではいかず
春先に大量に飛散するスギ・ヒノキ花粉による花粉症に
ここのところ苦しめられています。
(話のスケールが小さくてすみません)
花粉の呪いの真犯人をくもりなき目で見定めるため
近くの森に入ってみると、そこには間伐のなされていない
スギとヒノキの造林ばかりが…。
なぜ、こうなってしまったのか?
ブナなどの原生林は人里から離れたところで残っていました。
しかし戦後、政府は拡大造林政策を強力に推し進め
ブナ林をスギやヒノキの造林におきかえていきました。
日本海側の山地と奥羽山脈の稜線あたりに広がっていたブナ林も
戦後大規模に伐採されてしまいました。
こうしたなか白神山地のブナ林は、保護運動の抵抗もあり
まとまった天然林として最後に残されたところとなりました。
そして、世界遺産に登録されたのです。
人による伐採・開発からブナ林をまもっていた装備としては
比較的人里から離れたところにあったこと
ブナが用材として使えなかったこと
白神山地のように積雪や地質・地形により人が入りにくかったこと
などがあります。
なかでも見逃せないのは
山岳信仰により守られていたことです。
英彦山では修験道の山岳信仰に守られていたため
ブナの原生林が残されています。
(最近の台風に痛めつけられましたが)
宝満山も修験道、山岳信仰の山なので
ある時期まではブナ林を守っていたのかもしれません。
しかし山の神への信仰がおとろえるとともに
おおくの山々でブナ林が失われてしまいました。
山の神の命と森の命は表裏一体の関係にあったわけです。
「もののけ姫」(宮崎駿監督・スタジオジブリ)の物語には
このようなバックグラウンドが。
しかしさすが、宮崎映画はこれをまことに詩的・象徴的に描いています。
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