2010年11月1日月曜日
「アイランド」
きのう映画「アイランド」(2005年)をやっていました。
ユアン・マクレガー、スカーレット・ヨハンソン主演。
臓器移植のためのクローンらによる「人間」解放のドラマ。
遺伝子工学・クローン技術、臓器移植と人権との相克(生命倫理)
を物語りの機動ポイントとする点で
カズオ・イシグロさんの「わたしを離さないで」(2005年)と共通しています。
人権の歴史は、限られたお金持ちの白人男性からそうでない人々へ
享受することができる人のすそ野を少しずつ広げていく歴史。
クローンははたして人権享有主体性があるのか?
憲法論・人権論としてはこういう問題設定になります。
クローンたちはそれと知らずクローン製造工場で単純労働をさせられています。
彼らを集団管理するための手段が夢の島「アイランド」への抽選チャンス。
たとえクローンであっても、夢がなければ生きられない。
淡い夢さえ与えられれば容易に管理されてしまう存在でもある。
(福岡市長選がはじまり、やはりアイランドが争点のよう。)
クローン技術の進歩に伴い、過去の記憶と好奇心をもつ個体があらわれる。
それがユアン・マクレガー演じるリンカーン。
過去の記憶と好奇心をもつことが夢をもつことより
さらに人間らしい属性であることが主張されています。
リンカーンは好奇心をフル稼働させて
真実を発見し陰謀をあばき、自由への逃走をはじめます。
こんなことを書くとまたお叱りを受けるでしょうが
クローンが人間にほかならないことをわれわれに納得させるのは
スカーレット・ヨハンソンの可愛さでしょう。
「真珠の耳飾りの少女」(2003)
「ロスト・イン・トランスレーション」(同)
「ブーリン家の姉妹」(2008)
どれも大好き。
クライマックスでは、アフリカ系アメリカ人捜査官の反逆により
ことが第二の奴隷解放であることが示唆されます。
ここにきて、主人公の名がリンカーンであることの理由がはっきりします。
(もっと早く気づけよ!と自分につっこみを入れつつ)
リンカーンの元の個体はクローン臓器を得て再生を企図し
個人ボートに「再生」号と名付けています。
映画のラストでこの「再生」号で自由へ旅立つのはもちろんリンカーンたち。
「再生」は意味を変え、クローンたちの人間としての再生を意味することに。
奴隷解放の父、南北戦争の北軍指導者、共和党初代大統領の
エイブラハム・リンカーンは生没年は1809年~1865年。
坂本龍馬は1836年生まれですから27歳年下ですが、ほぼ同時代人。
リンカーンも龍馬暗殺の2年前にやはり暗殺されています。
二人とも人類の多年にわたる自由獲得の努力の犠牲者。
大河ドラマもいよいよ終盤ですね。
子どもが龍馬の伝記をマンガで読んでショックを受けていました。
史実だから、暗殺がなかったことにはできないんでしょうねぇ。
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