2010年10月19日火曜日
Hello,Again~昔とちがうところ~
リスペクトする作品に自己の趣向をつけくわえて新しい作品世界をつくりだす(カバーする)作業は、なにも徳永英明さんやJUJUさんがはじめたものではありません。
古今、新古今の時代からおこなわれていたことです(本歌取り)。
人類の歴史が先人の知的営みになにものかを付けくわえていく作業だとすれば、歌も例外ではありえません。
おおげさにいえば、駄洒落もその場に浮遊する日常的な言葉の意味をズラす(異化する)ことによって新しい世界をつくりだす知的な営みであると自負しています(みなさんのあきれる顔が目に浮かびますが…)。
さて、「藪の中」の真犯人はだれか?
そのヒントは芥川がつけくわえた趣向(昔とちがうところ)のなかにあるのではないでしょうか?
「藪の中」の本歌は「古今物語集」の説話「妻を具して丹波国に行く男、大江山において縛らるること」です。
現場は山科とは真逆方向の(丹波国に行く途中の)大江山になっています。
大江山は酒呑童子で知られるところ。
酒呑童子は鬼の頭領(平安時代、大江山に出没した強盗団ボスの文学的表現でしょうが)。
あまりにも悪行を働くので、帝の命により摂津源氏の源頼光をリーダーに嵯峨源氏の渡辺綱ら頼光四天王により討伐隊が結成され、成敗された。
しかし首を切られた後でも頼光の兜に噛み付いた!
いや、ほんと。
嘘だと思うなら唐津くんち(曳山展示場)に行ってください。
物証をみることができます(11番ヤマ)。
芥川が殺害現場を180度方向転換した理由は、大江山が喚起するイメージを嫌ったからでしょう。
多襄丸を鬼のような輩としたくなかったのだと思います。
最初に書いたように、山科や逢坂の関が喚起する男女の愛憎、悲恋などのイメージを援用しつつ、本事件をリメイクしたかったのではないでしょうか。
※検察官による証拠隠滅・犯人隠避のこと
シドニー小林さん、いつも適切なコメントおそれいります。
論旨が重層化され、ありがたいです。
ご指摘の検察官による証拠隠滅・犯人隠避事件については、地域のみなさまやお客さまからも多々ご質問をいただいているところであり、ブログにとりあげるべきかどうか迷っています。
捜査中、あるいは、公判中の事件をマスコミが報道するところの事実(捜査当局が選択的にリークした伝聞証言)にもとづいて論じることの危うさから躊躇しているわけです。
検察官による証拠隠滅・犯人隠避事件は一般事件とは異なるとは思うのですが。
※※大江山のこと
大江山の名誉のために付言しておけば、小式部内侍の歌も有名。
大江山いくのの道の遠ければまだふみも見ず天の橋立
ま、これも大江山の道が遠いと言っているのですが。
※※※写真のこと
本稿の写真は、パリ・ルーブル美術館のガラスのピラミッドにしたかったものの、手持ちの写真はどれもいまひとつ。
で薬師寺・西塔の写真にするかーと思ったのですが、これしかありませんでした。
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