2010年9月28日火曜日
武富士、更正法申請
武富士が会社更正法を申請。
感慨ひとしおです。
私が弁護士になったのは1986(昭和61)年。
その3年前に貸金業規制法制定・出資法改正がなされ、過剰貸付および誇大広告の禁止、上限金利の段階的な引下げ、取立行為の規制などが実施されていたものの、なおサラ金による意識的な過剰貸付、暴力的な取立、高金利が横行していました。
法律事務所に債務整理の相談にみえられる方も、サラ金業者に追い込みをかけられて自殺か夜逃げ寸前という状態でした。
その年の夏に四国旅行へ行ったとき、松山の空港でサラ金の看板が林立しているのを見て、抱えていた事件の依頼人の顔がつぎつぎに浮かび、せっかくの旅行気分がふっとんだことを鮮明に記憶しています。
しばらくは暴力的な取立に対する喧嘩ごしの交渉がつづきました。
ある時期サラ金大手が相次いで上場し、ある会社の担当者などわざわざ電話してきて「これまで色々とご迷惑をおかけしてきましたが、うちも上場することになったので、これからは紳士的にやらせてもらいます。」などと言っていました。
このころから、大手による暴力的な請求はたしかになくなりました。しかし、過剰融資や高利の問題がなくなったわけではありません。
犯罪にはあたらないけれども、利息制限法には違反(グレーゾーン金利)した貸付はそのままでした。
サラ金大手各社が派手なテレビCMを常時放映し、高株価がつづくといった状況がつづきました。それまで駅前に店舗を構えていたテナントがつぎつぎと廃業に追い込まれるなか、サラ金の店舗ばかりが看板を連ねていました。
利息制限法に違反した「高利貸し」という業態(コンプライアンス無視のビジネスモデル)がこれほど栄えた時代はやはり異常というほかありません。
転機となったのは、06(平成18)年の最高裁判決。
グレーゾーン金利は無効と断じました。
最高裁が依拠したのはもちろん利息制限法。
その1条はつぎのとおり定めています。
金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
1 元本の額が10万円未満の場合 年2割
2 元本の額が10万円以上100万円未満の場合 年1割8分
3 元本の額が100万円以上の場合 年1割5分
このわずか1条の条文が武富士を更正法申請に追い込んだわけです。
ゴリアテをたおしたダビデのように。
やま
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