大聖寺の城外、全昌寺といふ寺に泊まる。なほ加賀の地なり。曽良も前の夜この寺に泊まりて、
よもすがら秋風聞くや裏の山
と残す。一夜の隔て、千里に同じ。われも秋風を聞きて衆寮に臥せば、あけぼのの空近う、読経声澄むままに、鐘板鳴りて食堂に入る。今日は越前の国へと、心早卒にして堂下に下るを、若き僧ども紙硯をかかへ、階の下まで追ひ来たる。をりふし庭中の柳散れば、
庭掃きて出でばや寺に散る柳
とりあへぬさまして、草鞋ながら書き捨つ。
山中温泉のなかを大聖寺川が流れていましたが、川沿いにくだれば大聖寺の町。現在は、加賀市。JRだと福井から30分ほど。全昌寺は大聖寺の駅から歩いて10分ほどです。
秋風は金沢あたりから吹いていた別れのテーマ曲。それを一晩中聞いていたというのですから、曽良の心中の苦悩はいかほどか。
芭蕉と曽良は別れて一夜、しかし千里の隔たりに等しい。
うちの蒼空たちは、関空、ドバイ、ベニスの各空港を経由して、文字どおり数千里離れていってしまいました。関空からドバイへの空のうえではずっとギャン泣きだったそうで、日本を離れる心細さを赤子ながら感じたのでしょうか。
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