2016年1月15日金曜日
亡くなった方の祭祀財産(仏壇・お墓),遺骨の帰属先
相続において,一般に遺産といわれるのは,土地・建物などの不動産や,預貯金,株式等,現金,動産類です。
仏壇,お墓,遺骨など祭祀に関する権利の承継は,民法上,これと別問題とされています。
なぜなら,後者は宗教の問題がからんでくるからです。
そのため,このような定めになっています(民法897条)。
系譜,祭具及び墳墓の所有権は,前条の規定(一般の遺産に関する定め)にかかわらず,慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する(1項本文)。
ただし,被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは,その者が承継する(1項但し書き)。
前項本文の場合において慣習が明らかでないときは,同項の権利を承継すべき者は,家庭裁判所が定める(2項)。
つまり,①被相続人の指定,②慣習,③家庭裁判所の決定という順です。
家庭裁判所が決める際の基準は,民法に定めがありません。
この問題に関する先例(リーディングケース)とされる東京高決平18・4・19判タ1239・289は,次のような判断枠組みを定立しています。
①承継候補者と被相続人との間の身分関係や事実上の生活関係,②承継候補者と祭具等との間の場所的関係,③祭具等の取得の目的や管理等の経緯,③承継候補者の祭祀主宰の意思や能力,④その他一切の事情を総合的に判断。
つまり,一切の事情を総合的に判断すべしということ。
こういった総合判断は弁護士泣かせなんですね。
相談者,依頼者に勝てますか?と尋ねられて,正直に答えるとなると
さぁ,どうでしょう?と言わざるをえません。
実際,判例時報2275号46頁に紹介されている事案も,原審である家庭裁判所の判断と即時抗告審である名古屋高決平成26・6・26は判断がわかれています。
原審は二女としていたのを抗告審では長女に変更したわけです。
ことほど左様に総合判断はむずかしいんですねぇ。
やはり,遺言書を作成して,祭祀の承継者を指定しておくことが望まれます。
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