2016年1月29日金曜日
積もり積もったあとには…
先週末から今週にかけて,筑紫地区には大寒波。
大雪や水道管の凍結など,
多くの被害がでてしまったようです。
それにしても,
「雪」,すごい勢いで積もりましたね。
私がこの地域に来てから3年たちましたが,
これまでになかった量が積もりました。
さて,
今日の私のお話は,
「雪」のようにすごい勢いで
積み重なってしまう「借金」についてです。
(うまい! 座布団2枚!! ……。)
いわゆるサラ金やクレジットカードのキャッシング等,
今の日本では,
お金を簡単に借りられるようになってしまっています。
その分,
「気づかないうちに積もり過ぎて,
もうどうにもできない状況になってしまった」
というご相談が非常に多くなっています。
借金の中でも気を付けたいのは,
住宅ローン です。
月々,それなりに大きな金額を何十年間と
払い続けなければいけません。
・怪我をして,長期入院してしまった。
・勤務先が倒産してしまった。
・親の介護をするために仕事を変えなければならなくなった。
・子どもの学費が増えてきて,ローン返済が苦しくなった。
事情は人それぞれですが,
どれも他人事ではありません。
自己破産の申立をすると,
自宅を手放さなければならなくなる可能性が
極めて高い。
そこで活用したいのが,
個人再生手続の「住宅貸付債権に関する特則」
いわゆる「住宅ローン特則」です。
ほぼ今まで通りの支払いを継続して
ご自宅を残すことができる仕組みです。
ただし,住宅ローンの支払の滞納分があると,
それを事前に解消するよう求められることが多く,
滞納が3か月分を超えてくると,
一筋縄ではいきません。
ですから,
1か月分でも滞納してしまったときは,
まず一度,ご相談にお越しください。
早めにご相談をいただければ,
その先の対応もスムーズです。
大切なものをきちんと守るためにも,
ぜひ弁護士をご活用ください。
(森)
2016年1月22日金曜日
交通事故研修に行ってきました
先日、交通事故についての研修に行ってきました。
そこでお話しをされた方の言葉で、強く印象に残ったものがあります。
交通事故の被害者にとって、いい弁護士とはどんな弁護士か?という問いに対する答えです。
交通事故に関する知識がたくさんある弁護士でしょうか?交通事故をたくさん扱っている弁護士でしょうか?それとも、保険会社との交渉に強い弁護士でしょうか。
その方の答えは、違いました
「被害者の話を聞いてくれる弁護士。何でも知っていますよという様子の弁護士はあまり信用できない」というものでした。
弁護士も何でも知っているわけではありません。
事実を丁寧に繰り返し確認し、そこから、似たような交通事故や症例はないか、参考になる文献はないか、例外的に請求が認められる場合はないか等、徹底的に調査します。事実が1つ違うだけで、結論が変わることもあります。
例えば、いわゆる主婦の方も、年齢や家事労働の状況等を考慮して、適切な額の休業損害や逸失利益を請求できます。
なので、まずは、被害者の人の声を聞かないことには、適切なアドバイスは出来ません。
また、誰かに話しを聞いてもらうというだけで、気持ちが楽になることもあります。
このような理由から、当事務所では、交通事故の内容や被害実態の聴取りに力を入れています。
そのことの大切さを改めて確認できた研修でした。
なお、当事務所では、交通事故の初回相談は無料です。ぜひ、お話をしに来て下さい。
2016年1月15日金曜日
亡くなった方の祭祀財産(仏壇・お墓),遺骨の帰属先
相続において,一般に遺産といわれるのは,土地・建物などの不動産や,預貯金,株式等,現金,動産類です。
仏壇,お墓,遺骨など祭祀に関する権利の承継は,民法上,これと別問題とされています。
なぜなら,後者は宗教の問題がからんでくるからです。
そのため,このような定めになっています(民法897条)。
系譜,祭具及び墳墓の所有権は,前条の規定(一般の遺産に関する定め)にかかわらず,慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する(1項本文)。
ただし,被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは,その者が承継する(1項但し書き)。
前項本文の場合において慣習が明らかでないときは,同項の権利を承継すべき者は,家庭裁判所が定める(2項)。
つまり,①被相続人の指定,②慣習,③家庭裁判所の決定という順です。
家庭裁判所が決める際の基準は,民法に定めがありません。
この問題に関する先例(リーディングケース)とされる東京高決平18・4・19判タ1239・289は,次のような判断枠組みを定立しています。
①承継候補者と被相続人との間の身分関係や事実上の生活関係,②承継候補者と祭具等との間の場所的関係,③祭具等の取得の目的や管理等の経緯,③承継候補者の祭祀主宰の意思や能力,④その他一切の事情を総合的に判断。
つまり,一切の事情を総合的に判断すべしということ。
こういった総合判断は弁護士泣かせなんですね。
相談者,依頼者に勝てますか?と尋ねられて,正直に答えるとなると
さぁ,どうでしょう?と言わざるをえません。
実際,判例時報2275号46頁に紹介されている事案も,原審である家庭裁判所の判断と即時抗告審である名古屋高決平成26・6・26は判断がわかれています。
原審は二女としていたのを抗告審では長女に変更したわけです。
ことほど左様に総合判断はむずかしいんですねぇ。
やはり,遺言書を作成して,祭祀の承継者を指定しておくことが望まれます。
相続人の不存在と特別縁故者に対する相続財産の分与
現在,福岡家庭裁判所から依頼を受け,ある方の成年後見人になっています。
その方には相続人がいません。
民法上,相続は,遺言を書かなければ,法定相続ということになります。
法定相続の場合,相続人の定めがあり,配偶者,子,その代襲相続人(孫など),子がないときは両親,両親が亡くなっているときは兄弟姉妹,その代襲相続人(甥,姪まで)となっています(民法886条~890条)。
そのため,妻側のそれ以外の親族,夫側(義理)の両親,兄弟姉妹,その代襲相続人(甥,姪)などの親族がおられたとしても,その方々は相続人ではないことになります。
そのようなときは,相続人が不存在であるということになります。その場合,家庭裁判所により相続財産管理人が選任されます(民法952条)。
相続財産管理人は,相続債権者や受遺者に支払いを行い,相続人を捜索します。
これにより,相続人が見つからず,相続財産が残ったときは,国庫に帰属することになります(民法959条)。
これは先ほどのご親族や被相続人に縁故のあった方々からすると,まことに残念な結論です。
そこで,例外が用意されています。それは次のような場合・方々です。
①被相続人と生計を同じくしていた者,②被相続人の療養看護に努めた者,③その他被相続人と特別の縁故があった者。
このような場合・方々には,その請求により,家庭裁判所は,相続財産の全部又は一部を与えることができます(民法968条の3)。
法律の条文に枝番がついているときは,あとから法改正がおこなわれたことを示しています。
本条文も,枝番がついているので,あとから法改正がおこなわれたものです。
東京家裁審判,平成24・4・20(判例時報2275・106)は,これを認めた事例判決です。
生前や死後の縁故の程度に応じて,被相続人の相続財産総額1億4000万円の預金のうち,被相続人の義理の姪に500万円,義理の従姉妹に2500万円をそれぞれ分与しています。
法定相続(人)制度の硬直性を事案に応じて具体的妥当性を図った判断といえるでしょう。
遺言の作成により,生前に問題に解決することが望ましいことはいうまでもありません。
2016年新年号事務所ニュース
2016年新年号の事務所ニュースを発行しました。
巻頭は,恒例の大場敬介先生のペーパー・スクリーン版画「暖かな世界,明るい未来・・・」と,稲村晴夫弁護士のご挨拶。
寄稿の1つは,合同会社レインボーローズ,訪問看護ステーションはるかによる「地域に無限の可能性を」。
寄稿の2つは,指揮者の楠本隆一氏による「生きがいとしての音楽」です。
楠本氏は井上茉彩弁護士の父上です。
事件報告は,森俊輔弁護士による「欠陥建築の業者と闘う」。
その他,弁護士のご挨拶・所感,事務局の「飼ってみたい生き物」,セミナーのご案内という記事になっています。
本年もよろしくお願いいたします。
ご希望のかたは,当事務所事務局までご遠慮なくお問い合せください。
従業員が競合会社を設立できるか?
【賃貸管理等を行う不動産業者の従業員が在職中競合会社を設立し,従来の顧客を奪ったことにつき不法行為が肯定され,管理委託費用相当額の逸失利益の損害が認められた事例】
判例時報平成28年1月11日号に掲載された東京地判平成27・3・30の事例判決です。
X会社社長が信頼していた右腕社員Yが他の社員と顧客をごっそり引き連れて隣で商売をはじめたときに,X会社はYに対し差止めや損害賠償請求ができるのか?
中小企業の社長によくある誤解ですが,なんとかできると考えられている方がおおいと思います。しかし,原則として差し止めや損害賠償請求はできません。理由は,自由競争の範囲内だから。
もちろん例外はあります。自由競争の範囲を逸脱した場合,損害賠償請求ができます。
本判決は,この例外を認めた事例判決です。
本件では,Yが在職中から開業準備行為を行っており,顧客に対する営業活動を行っていたものと推認し,引継物件のパソコン内のデータを消去するなどしたことから,違法な態様でXの営業活動を妨害し,顧客に対しても虚偽の説明をして勧誘したものであり,社会通念上自由競争の範囲を逸脱したものであるとしました。
逆に言えば,これだけの違法な態様,虚偽の説明を立証しないかぎり,自由競争の範囲内に収まってしまい,X会社側の敗訴となってしまうわけです。
それでは,X会社としては,なんの防御もできないのか?
この点,競業避止契約を従業員と結んでおくことで,一定防御することができます。
この点,競業避止契約を従業員と結んでおくことで,一定防御することができます。
ですが,これも万能ではなく,従業員の独立・競業を100%シャット・アウトすることはできないことになっています。
そこから先は,従業員が反旗をひるがえさないよう,どこまで良好な労使関係を結んでいけるかという経営者としての力量が試される領域となります。
ご参考まで。