2013年2月14日木曜日
最近の振り込め詐欺
30年弱ほど前
司法修習を受けた。
司法試験合格後
弁護士になるまでの2年間だ。
最初の4か月と最後の4か月は
東京・湯島にあった司法研修所での研修。
その間の16か月間は
現場で研修する実務修習。
民事裁判,刑事裁判,検察修習,弁護修習が
各4か月ずつ。
司法試験の合格者が500人の時代で
わりとゆったりした研修期間だった。
検察修習時代には
犯罪の手口の講習も受けた。
たとえば
スリ。
ふつうに財布をとったのでは
簡単にバレてしまう。
そこでどうするかだけれども
目くらましを使う。
ドンと肩をぶつけるだけでも
人間の注意をそちらにひきつけることができる。
フランスの地下鉄で財布をすられたが
あまりにあざやかでしばらく気づかなかった。
人間心理は
意外ともろい。
すこし揺さぶられるだけで
ふだんと違う対応をしてしまう。
脅したり,すかしたり
あなただけに儲け話をもちかけたり。
すると,ふだんは冷静なのに
急に視野がせばまり,まわりが見えなくなってしまう。
振り込め詐欺も
たくみに,人間心理の弱いところをついてくる。
子どもが事故にあった!
エッチなインターネットサイトをみた!
きょうかぎり,あなたかぎりの,儲け話!
などなど。
最近の振り込め詐欺は
手が込んでいる。
劇場型というものだ。
ま,ひと芝居うつ,というぐらいだから。
登場人物は複数だ。
わるい人間役とよい人間役が交互に電話をかけてくる。
わるい役のやつが脅したりすかしたりしたあと
よい役のやつが親身になって話を聴いたりする。
道具立てもとても複雑だ。
預金だとか株だとか,わかりやすい商品はつかわない。
外貨だとか新株引受権だとか
しろうとにはむずかしげな商品がつかわれる。
会社も複数で
A,B,C,D…。
Aは倒産して,BとCが合併して
Dがその業務を引き継いで…。
こう複雑になると
法律相談もやっかいだ。
全部詐欺ですよ!
と説明するも,信じてもらえない。
わるい役はそうだろうけれども
よい役の人がそんな人のはずはない,とか。
B,C,Dはそうかもしれないが
A社はたしかに存在していました,とか。
詐欺師より信じてもらえないとは
不徳の致すところだ。
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