2012年11月29日木曜日
女工萌え
おくのほそ道に迷いこんだけれど
MK夫婦宅での読書談議に戻る。
Sさんが提供した話題は
『本屋さんで待ちあわせ』。
このチョイスは
わが意を得たりという感じ。
なぜなら,Sさんも広い意味で文筆業
話題やキャラもかぶっている。
三浦しをんを読んでいるといつも
頭のなかでSさんと混線してしまうぐらいだ。
『本屋さんで待ちあわせ』は前に書いたように
本のレビュー(書評)集である。
それはよい。
問題はそのチョイスだ。
冒頭いきなり
『女工哀史』(細井和喜蔵,岩波文庫)から。
タイトルも,期待にたがわず
「『女工哀史』に萌える」だ。
念のため解説しておくと『女工哀史』は
1925年(大正14年)の刊行。
紡績工場で働く女性労働者の生活実態を
克明に記録したルポルタージュだ。
いまの人には紡績工場もピンと来ないだろうが
近代日本の経済発展を担ったのである。
ボクは大阪の岸和田出身だが,子どものころ
近所には紡績・織布工場がいっぱいあった。
そんなの知らんよという人も,ニチボー貝塚が
女子バレーで強かったこととかは覚えているかな?
(ニチボー=大日本紡績で
貝塚は岸和田のお隣だ)
「萌え」ってなんだ?というのは
三浦さんじしんが解説している。
「とにかくモヤモヤジレジレして
たまらない気持ち」だ。
『女工哀史』に「萌える」
って,どういうこと?
と,三浦さんの仕掛けにまんまと
冒頭から引き込まれるわけである。
萌えたのは
三浦さんの友人Aちゃんだ。
いつ萌えたかというと
Aちゃんが小学校のときというからさすがだ。
さすが作家の周辺には
はんぱない読書猛者が結集している。
ぼくも小学校の友人に
アオナシくんというのがいた。
かれもそうとうな
読書家だった。
われわれが遊びほうけていたときに
ひとり読書をしていた。
『ジーキル博士とハイド氏』(新潮文庫)などを
読んでいたのが印象に残っている。
(ボクもすこしは読んだが,そんな本は
世界名作全集で読むもんだと誤解していた。)
さすがのかれも『女工哀史』や『日本の下層社会』
までは読んでいなかったのではなかろうか?
(アオナシくん
読んでいたのなら,ゴメン。)
一般の大学生となると,『女工哀史』を読んだ人は
数パーセントいるかいないかであろう。
じゃ,なぜAちゃんは
読んだのか?
それはそのころの彼女が
「女工萌え」だったかららしい。
微笑ましいが
それだけで終わらせてはいけない。
たぶん三浦さんは
そう思ったに違いない。
このエピソードは
読書について重要な問題を含んでいる。
と,ここまで書いたところで
予約のお客さんが見えた。
つづきはまた。
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