2010年10月25日月曜日
花
お花をいただきました!
お花屋さんの立退き交渉事件。
依頼人は土地を借りて店舗を建てて経営されていました。
契約期間は3年とされ、10月末で期限切れ。
地主さんから立退きを求められました。
この種の紛争は不動産バブルの時代に頻発し社会問題化しました。
地上げ屋などという穏やかならぬ人たちが悪名をとどろかせたころです。
最近は不景気なこともあり数は減っています。
でも個々の当事者にとって深刻な問題であることに変わりありません。
一般の契約であれば「約束は守ろう」の原則にしたがう必要があります。
しかし、建物所有を目的とする借地契約はこの例外にあたります。
民法には典型契約として賃貸借の定めがあるところ、
その特別法として借地借家法があります。
民法は対等な当事者を想定し、約束の内容について自由放任主義です。
これに対し借地借家法は経済的に弱い立場にある借主を保護する法律です。
地主は土地を有効活用したい。
借主は投資しお得意さまもでき生活がかかっています。
両者の利害はまっこうから対立します。
借地借家法は借地権の存続期間について原則30年と定めています。
これより短い約束は無効。
こういうのを片面的強行法規といいます。
「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。」
憲法29条2項が定める公共の福祉による財産権の制約のひとつでしょう。
もととなる借地法は大正デモクラシーの時代につくられました。
近年の「自由化」のながれのなか、借主の保護は弱められつつあります。
期間満了後に従前どおり貸借をつづけることを更新と呼びます。
地主さんがこの更新を拒絶することは原則としてできません。
しかし「正当の事由」があると認められる場合は例外。
①貸主、借主が土地の使用を必要とする事情
②借地に関する従前の経過
③土地の利用状況
④立退料
この4ポイントを総合考慮して「正当の事由」の有無を裁判官が判断します。
昔とちがい、立退料がポイントとなっているところが規制緩和のあらわれです。
交渉の結果、一定の立退料を支払っていただき解決することに。
依頼人は新天地で一から出直しをされることになりました。
いただいたお花は蘭。
被子植物の中では最も後に地球上に現れたのだそうです。
そのため
先行植物の隙間に進出することになり、苛酷な環境に適応。
花は左右対称で、虫媒花の中では特異なほど効率の良い花形に変異。
現在においてもなお急速な進化を続けているのだとか。
新天地は楽な環境ではないでしょうが
美しい花々を咲かせられることを切に願っています。
※依頼人のプライバシー保護もあり少し設定を変えています。
困った花屋さんを助けて感謝されるという月9のようなプロットは変えていません。
私はオーストラリアに4年滞在しましたが、彼の地では地主の権利が強く契約期間が満了すればそれでオシマイ、です。ただ、これも分かり易いといえば分かり易い制度で、借りる方もより条件の良い所へさっさと転居したり、家賃を引き下げたり、という具合で「契約」社会そのものです。
返信削除こういう分かり易い制度の方がいいのではないかと思うようになりました。