菅野美穂のオビに釣られてある作家の小説を読んだら、ちょっと紋切り型で宣伝臭がしたので途中で放り投げてしまいました。
たまたまその後に読んだのが角田光代さんの「ひそやかな花園」。
産科医療の技術的進歩と倫理(人の道)との相克という背景は同じながら、こちらはさすが「これぞ小説」という感じ。意識の背景に広がる氷山の下部のごとき無意識にもビンビン働きかけられ、多様なイメージが喚起、ハラハラ、ドキドキし、最後まで裏切られませんでした。
角田さんがインスパイアされたかどうか知りませんが、これは私が大好きな「わたしを離さないで」(カズオ・イシグロ)のまるで姉妹編のよう。角田さんのほうが現実となめらかに地続きとなっていて受けとめやすい作品となっています。
「この大根おろしには二つの運命があるわけだ」
「おい、涼子、知らなかったな、この子が生まれてくるのは、こんなにも美しい場所だったのか。」
ねえ、私、あの二人を守ったよ。きちんとできたよね?だいじょうぶだよね?あの子たちはもう、だいじょうぶだよね?
「そっか。でも、また次がある。」
主人公たちをつうじて角田さんが語りかけてくる言葉たちに励まされます。「この人の言っていることは、光太郎が私たちに伝えたかったことに違いない。すれ違うように知り合っただけの私たちに。」
本歌であろう「秘密の花園」はそれこそ小学校時代に読んだきりで内容をまったく思い出せません。でも、「まるで、海に沈んだ花畑のよう」に意識下で作用したことでしょう。あらためて読んでみたいと思います。
やま
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