2010年9月25日土曜日
商人しぐさ
福岡県中小企業家同友会の共育委員会で「江戸しぐさ」についておしえてもらったことがあります。
江戸しぐさは、江戸町方の商人道、生活哲学・道。
雨の日に互いの傘を外側に傾け、ぬれないようにすれ違うこと(傘かしげ)、たとえば相手に自分の足を踏まれたときに「すみません、こちらがうかつでした」と自分が謝ることで場の雰囲気を保つこと(うかつあやまり)など。
現代の世相にかんがみ、江戸人の知恵を今にいかそうというお話しでした。
最近、建築会社どうしの紛争解決を手がけました。
依頼人の会社の数量計算ミスにより発注会社に損害が発生したとされ、その賠償を求められた事件です。
請求額は代金の6倍以上でした。
以前であれば不問にふされたようなミスなのに、時勢がら発注会社も元請けから賠償を求められ、下請けにまで賠償を求めることになったとか。
建築業界においても、江戸しぐさが衰退しつつあるということでしょう。
当方は、商法526条の「買主による目的物の検査及び通知義務」という、あまり日ごろ使わない条文を根拠に応戦しました。
商人間の売買において、売主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない(1項)。
前項の規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により…その数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、…数量の不足を理由として…損害賠償の請求をすることができない(2項)。
残念ながら、現在の日本の商法は江戸しぐさに由来するものではありません。
が、売主だけでなく買主にも応分の「しぐさ」を求める考え方は、商人道としてあい通ずるところがあるようです。
交渉の結果、当方が代金相当額をおかえしして(損害賠償はしないで)解決することになりました。
示談書の差しかわしがすんだあと、相手方の担当者から「こちらに遺恨はありません。(私の依頼人に)よろしくお伝えください。」との言葉をいただきました。
相手方にとっては必ずしも満足な結果ではなかったと思います。それでもこのような商人しぐさ、厳しいご時勢においてはなおさら必要であろうと思います。
やま
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