2012年2月29日水曜日

日月潭と文武廟 by.台湾旅行も好きな福岡の弁護士



 (日月潭)



 (文武廟のうち武廟)



 (文廟で祈る女性)


 台湾旅行2日目は台中まで新幹線で行き
 あとはバスで日月潭と文武廟へ。

 「ニイタカヤマノボレ」で有名な玉山は標高3952mで
 富士山より高い。

 台湾には3000m級の山々が何十(数字忘れ)とあるらしい。
 文武湖も,そんな山々に囲まれた台湾の中央部に。

 周囲25kmもある自然湖らしく
 実に風光明媚。

 台湾の人たちが新婚旅行で訪れる場所のトップであり
 かつ,自殺のメッカらしい。

 結婚も人生の墓場とはいいますが
 どうせなら美しい風景のなかでということでしょう。

 かたわらには
 文武廟が。

 下段に武廟,上段に文廟。
 武廟は関羽,文廟は孔子を祀っています。

 関羽は,ご存知のとおり,三国志に出てくる
 蜀の創始者・劉備に仕えた武将。

 三国志の時代の人なので
 魏志倭人伝に出てくる卑弥呼と同時代人です。

 最近ではゲームのキャラクターとしてのほうが
 有名ですね。

 その人並み外れた武勇や義理を重んじる人物像が
 多くの人から称賛され,後世の人間より神格化されました。

 日本で武神といえば
 八幡神(八幡大菩薩)でしょうか。

 関帝は武神といいながら,信義に厚いことから
 現在では商売の神としても祭られています。

 長崎の崇福寺や興福寺にも
 関帝として祭られています。

 孔子はいわずとしれた
 儒教の始祖であり,文の神とされています。

 つまり,文武廟は一カ所をお参りするだけで,箱崎八幡宮と
 太宰府天満宮とにお参りした御利益をうることができるわけです。

 このあたり1999年9月21日に発生した台湾中部大地震により
 大きな被害を被ったそうですが,見事に復旧していました。

2012年2月28日火曜日

『ドラゴン・タトゥーの女』 by.映画も好きな福岡の弁護士



 (外星人博物館@士林夜市)

 デヴィッド・フィンチャー監督の
 映画『ドラゴン・タトゥーの女』みました。

 やはり映像は本とはちがい
 迫力があります。

 ダニエル・クレイグのしぶさ
 スエーデンの冬の厳しさ・美しさ。

 暴力シーン,調査シーンなどの迫力
 いずれも映像ならではでしょう。

 主人公ミカエル(ダニエル・クレイグ)の問題
 パートナー調査員リスベット(ルーニー・マーラ)の問題

 ヘンリック・ヴァンゲルが彼らに依頼した
 ヴァンゲル家の「殺人事件」とそこに至る連続殺人事件

 これら3つの問題がよりあわされながら
 終盤へむかってもりあげていきます。

 そのためいささか長尺ですが
 飽きさせません。

 当日,当番弁護士の当番にあたっていたため
 ミカエルが狙撃されたシーンの前後を見損ねました。

 上記3つの映像内事件のほか,映像外の事件まで侵入してきて
 いやがおうでも緊張が高まりました。

 ただヴァンゲル家の「殺人事件」の容疑者たちや
 後半やや駆け足で,原作を読んでいないとついていけないかも。

 また暴力シーンの迫力についていけない人もいるでしょう。
 でもまあ試しにどうぞ。

             ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳

2012年2月27日月曜日

夢のまた夢 by.夢,寝言も好きな福岡の弁護士



 『千と千尋の神隠し』なんて
 子どもダマシの夢物語だと切り捨てるか

 それとも夢のある夢物語だと
 自分の人生のうちがわに組み込んで生きていくのか?

 後者のほうが人生がゆたかだと思うのですが
 いかがでしょう?

 先日は事務所のパートナー会議でした。担当事務局(予定者を含む)
 3人と月例の受持事件の報告・検討会です。

 継続事件や新受事件の経過などについて報告しあい
 今後の方針を確認します。

 その後,ランチをしながら近況を報告しあって歓談。
 まずは夢の話から。

 事務局Aさんの話がウケました。
 基本,吸血鬼やゾンビに追いかけられる夢。

 キタムラカメラ(事務所のちかく)の土管のなかで
 隠れて,見つからないようにするのだとか…。

 やけにローカルだけど,やけにリアル。
 そのアンバランスが笑えました。

 彼女の悩みは
 最近,ゾンビに追いかけられる夢ばかりなこと。

 吸血鬼でもゾンビでもいっしょでしょ!
 と思いますが,
 
 吸血鬼のばあい,襲う側の快感も味わえたとか。
 なるほど。

 その原因を分析してみるに,ダンナさんにつられて最近
 バイオハザード・シリーズのDVDばかり観ているからのよう。

 じゃ,吸血鬼ものを観るようにすればいいじゃん
 ということで方針を確認して,その件は終了。

 つぎの話題は,事務局Bさんのダンナさんが
 夜な夜なしゃべる寝言の件。

 毎晩のように寝言をいい
 その話かたが異様に論争調なのだとか。

 寝言についてはみないろんな体験をしているようで
 他のメンバーからも報告多数。

 ぼくも山のテントのなかで,「○○くん!」と呼ばれたので
 「ハイ!」と返事をしたら,ただの寝言で他のメンバーに笑われたり

 日本弁護士連合会の会議の際,東北のほうの弁護士と同室になり
 彼が一晩中,怒ったような寝言をいうので眠れなかったり。

 この件については,うまい解決が思いつかなかったので
 ネットで検索してみました。

 すると,トップででてきたのは「夫の寝言」というブログ。
 これはほんとうに笑えます。

 この方のダンナさんは,それこそ毎晩のように
 一晩に何度も,面白い寝言をいうらしい。

 それにいちいち
 つっこみをいれているのが楽しい。

 さいきんのものを
 引用させてもらうと…

 (寝言)
  はやくー!!早く早く!!
  お前バカじゃないの?!

 (つっこみ) 
  すごく危険な目にあっている誰かに声をかけていたのだろうか。
  地震がきて家が崩れそうなのに私がゆっくりお菓子を食べながら
  出てくるとか,そんな感じ?

 (寝言)
  今思うとそうですね。
  その時は何も思わなかったけど。

 (つっこみ)
  今考えると…ってのはよくあることだなー。

 (寝言)
  最近はすごいねえ。
  ギンギラギンだよ、かあさんの顔が。

 (つっこみ)
  私の顔がなんだって?
  金粉でキンキラなのか脂でギンギラなのか…。
  どっちもイヤだ。

 (寝言)
  詐欺だよ、詐欺。
  お前ら詐欺だー!

 (つっこみ)
  ふふふ。寝言では騙されなかったようだ。
  でも現実には私に騙されている。
  たぶん私がこんなに太ると思っていなかっただろうに。
  ふふふ。でも私も夫がそんなに頭がうす……(あえて省略)

 てな,ぐあい。
 う~ん。なくて七癖…とはいうが。

 でもつれあいのこんな奇癖に接したときこそ
 夫婦愛の真価がとわれるのではあるまいか?

 夜な夜なくりかえされる夫の寝言に
 神経をすりへらし,寝室を別にする妻もいるでしょう。

 でもそれをユーモアでつつみこみ,枕元のメモ帳にせっせと
 書いてブログにアップする妻もいるでしょう。

 どっちがしあわせか?
 いうまでもないでしょう。

                ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳

2012年2月24日金曜日

トンネルのむこうは









 台湾で最初(正確には桃園空港のつぎ)に訪れたのは
 九份(きゅうふん)。

 台北よりさらに北
 港町・基隆にちかい山あいの町。

 雨にたたられましたが
 懐かしい雰囲気をあじわいました。

 以前来たときは案内されず
 こんかいがはじめて。

 それには宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』
 (2001年)のヒットが関係しています。

 19世紀末から金鉱の町として栄え
 1971年の閉山により急速に衰退(炭鉱町のよう)。

 歌手・一青窈の父親は
 ここの元金鉱主だとか。
 
 1989年,映画「悲情城市」(侯孝賢監督)のロケ地になり
 再び脚光を浴びるようになりました。

 ノスタルジックな風景に魅せられた若者を中心に
 多数の人々が訪れるようになったよう。

 宮崎監督も「悲情城市」をみたのでしょうか
 この地を訪れ,『千と千尋の神隠し』の舞台のモデルとしたとか。

 狭い路地に土産物屋と食物屋が連なる基山街をひやかしたあと
 右手におれて,急坂をしばらくいくと右に阿妹茶酒館。
 
 湯婆婆が経営する、八百万の神が体を休める湯屋「油屋」
 のモデルだとか。

 トンネルのむこうは
 懐かしい町でした。

2012年2月23日木曜日

一足はやい春



 先日,ロータリークラブのメンバーで
 台湾を訪問しました。

 フォルモサ(麗しの島)と呼ばれるだけあって
 麗しい景色を堪能しました。

 ほぼ中央部を北回帰線がとおり
 つまり夏至には太陽が真上にきます。

 そのため北回帰線より北部が亜熱帯
 南部が熱帯に属しています。

 すでにサクラだけでなく
 ツツジも咲き,春たけなわでした。

2012年2月22日水曜日

平成新山(1,483m)



 平成新山(1,483m)。
 90年から95年にかけての火山活動で形成された溶岩ドーム。

 普賢岳(1,359m)が雲仙岳の主峰でしたが
 現在では平成新山のほうが高くなりました。長崎県の最高峰。

 おおくの人々の生命を奪ったことなどなかったかのうように
 崇高な姿をみせています。

 人間の生命を平気で奪いながら崇高
 まるで旧約聖書の神のよう。

 新約の神が人間的なのにたいし旧約聖書の神が荒っぽいのは
 自然の厳しさになぞらえているからかもしれませんね。

 山頂数箇所から活発な噴気をだしており
 警戒区域のため登山禁止。

 われわれが生きているうちに
 登山できるようになるでしょうか?

 生きているうちにガウディのサクラダ・ファミリア教会の完成も
 みたいけれども,平成新山にも登ってみたいと思います。

2012年2月21日火曜日

災害の記憶



 (雲仙・普賢岳)

 雲仙普賢岳の大火砕流が発生したのは
 1991(平成3)年6月3日。

 私が弁護士5年目。
 20年余も前のことになってしまいました。

 取材に当たっていた報道関係者16名、そのタクシー運転手4名
 火山学者ら4名,警戒に当たっていた消防団員12名、警察官2名

 ほか6名の合わせて死者行方不明者43名
 と9名の負傷者を出す大惨事となりました。

 雲仙普賢岳の火山活動という天災が背景にありますが
 避難勧告区域中で無理な取材をつづけた人災でもありました。

 火山活動は、1989(平成元)年11月からの
 橘湾群発地震に始まり

 1990(平成2年)11月に噴火してから
 噴煙活動が観測されました。

 いったんはおさまるかに思えたものの
 1991(平成3)年2月に再噴火。

 降り積もった火山灰などによる土石流が発生するようになり
 6月3日の大火砕流となりました。

 そもそも雲仙では1792(寛政4)年に,島原大変肥後迷惑と呼ばれる
 死者、行方不明者1万5000人という、有史以来日本最大の火山災害が。

 こうした経過からして,6月3日の大災害は,予見可能であったし
 回避可能だったと思われるのですが,人間のさがでしょうか。

 さて3・11がちかづいてきていますが,災害の記憶は
 しっかりと刻まれ,未来への教訓となっているでしょうか?

2012年2月20日月曜日

『ビギナーズ・クラシックス 平家物語』



 (雲仙・国見岳)

 ここのところ日曜の帰りが遅く
 きのうも大河ドラマ『平清盛』を見損ねました。

 いったいどうなっているのか?ふつうのドラマだと
 2回も見損ねると,筋がわからなくなります。

 そんな方にお奨めなのが
 『ビギナーズ・クラシックス 平家物語』(角川書店=編)。

 角川文庫1冊で,平家物語の全ストーリーを現代文で
 読みどころを古文と現代文の両方で味わえます。

 読みどころにはもちろん,梶原景季と佐々木高綱による
 宇治川の先陣争いを描いた「宇治川」や
 
 熊谷直実が息子ほどの平家の貴公子・敦盛を涙ながらに討つ
 「敦盛最期」なども含まれています。

 私のまわりにも梶原さん,佐々木さん,熊谷さんらが
 おられますが,このころからの名族なんですねぇ。

 これら読みどころは,中学校だったかで習ったわけですが
 こんな面白い話が学校で習うとなんであんなに退屈なのでしょう?

 京都に行くとよく嵯峨野にいくわけですが
 仲国が想夫恋を奏でる小督を発見する「小督」(渡月橋北に小督塚),

 怨念を超えた祇王と仏御前の友情物語である「祇王」(祇王寺),
 『滝口入道』の題材となった「横笛」(滝口寺)などのエピソードも。

 乱世にあっても美しく生きることの大切さをあらためて
 教えられます。

 みなさまもどうぞ。

2012年2月17日金曜日

『二流小説家』(The Serialist )



(雲仙・妙見岳1,333m
 雲仙岳は、最高峰の平成新山(1,483m)を中心に、普賢岳(1,359m)
 国見岳(1,347m)、妙見岳などの山々からなっており、その山行は
 ぐるぐるとアトラクションをめぐるような感覚が味わえます。)

 ディウ”ィッド・ゴードン(青木千鶴訳)による
 『二流小説家』(早川書房)。

 帯によると、こう。
 史上初、三冠達成!

 このミステリーがすごい!
 2012年版 海外編(宝島社) 第1位

 週刊文春ミステリーベスト10
 2011年 海外部門 第1位

 ミステリが読みたい!
 2012年版 海外編 第1位

 連続殺人鬼から届いた告白本の執筆依頼。
 売れない作家の運命は劇的に変わる!

 以上。
 …

 というわけにもいかないので
 以下すこし解説を。

 司馬遼太郎の小説と一口に言っても
 前期と後期では作風に違いがあります。

 新潮文庫に入っている『関ヶ原』や『国盗り物語』と
 文春文庫に入っている『龍馬が行く』や『跳ぶが如く』の違いです。

 前者は構築的で冗長なところがなく
 後者はうんちくを語りながら、のびやかな筆致で話がながいです。

 ぼくは少なくとも若いころは
 前者のほうが好きでした。

 司馬遼太郎が古本屋で仕入れた高価なタネ本を片手に
 ながながとうんちくを語りはじめると、またか~とため息が。

 でもファンにとっては
 そこがたまらなく好いのでしょうね。

 The Serialistのばあい、主人公が二流小説家なせいか
 いろんなジャンルに話がとんで脱線します。

 (実はそれが重要な伏線になっていたのかもしれませんが
 ちょっとうかつに読んだので気づきませんでした。)

 ミステリの途中で吸血鬼ものに脱線したりします。
 それはそれで魅力的な世界で続きが気になるのですが。

 ま、ディズニーワールドに行ったつもりで
 いろんなアトラクションを楽しむという感じでしょうか。

 さて本書もミステリなので、冒頭「おもな登場人物」が紹介され
 もちろん、犯人はこの中にいるわけです。

 で、なかなかうまく予想を裏切られ
 う~ん、してやられた!という仕掛けになっています。

 つまり、いわゆるパズル(論理・数学的な解法)としては
 よくできています。

 ただし、なにがしかのプロとしての弁護士の立場からすると
 この人物造形には無理があると考えます。

 でも、多くの人たちが今年のベストミステリというのだから
 そこは小さなキズなのでしょう。

 ま、ディズニーワールドでそのようなことをいうのは
 野暮な話です。

 十分に楽しめるアトラクションの数々であることに
 間違いありません。みなさまも一度行ってみてはいかが?

2012年2月16日木曜日

『ドラゴン・タトゥーの女』&『背後の足音』



 きょうからワーナー・マイカル・シネマズ筑紫野で
 映画『ドラゴン・タトゥーの女』が公開。

 原作は『ミレニアム』(Millennium)
 北欧スウェーデンの作家スティーグ・ラーソンによる推理小説。

 「ドラゴン・タトゥーの女」「火と戯れる女」
 「眠れる女と狂卓の騎士」からなる三部作です。

 スウェーデンの推理小説ながら
 全世界で6500万部を売り上げた、ベストセラー。

 スウェーデン版映画を観た方もいるでしょうが
 デヴィッド・フィンチャーがリメイク。

 「ドラゴン・タトゥーの女」リスベット・サランデルを演じるのは
 ルーニー・マーラ。

 『ソーシャル・ネットワーク』で
 主人公の元彼女。

 主人公のミカエル・ブルムクヴィストを演じるのは
 ダニエル・クレイグ。

 言わずと知れた
 近作のジェームズ・ボンドですね。

 是非とも観に行きたい。
 でも時間が…。なんとかしなければ…。

 かくてスウェーデンといえば福祉国家のイメージだったのですが
 やはり人間の住むところ犯罪あり。

 というわけで、『背後の足音』上・下(創元推理文庫)
 ヘニング・マンケル著、柳沢 由実子・訳。

 シリーズ第7作目だそうで
 知りませんでした。

 『ミレニアム』のヒットにより北欧ミステリに注目が集まったせいか
 私の目にもとまりました。

 ヴァランダーという中高年刑事が糖尿病、睡眠不足にあえぎ
 スウェーデン社会の犯罪化を嘆きながら事件解決に挑みます。

 これもスウェーデンの犯罪小説、警察小説であり
 ミステリです。

 同僚らと対話しながら謎解きもしますが
 基本は体をはってのハードボイルド仕立てとなっております。

 ミステリというのは、最初に登場人物の紹介があって
 犯人はこの中にいるのがお約束になっています。

 ですから、登場人物が少なければ少ないほど
 作者と読者の知恵比べが面白くなります。

 これは日本の和歌や俳句に通じるもので
 しばりが厳しいほどおもしろみが出てくるわけです。

 ぎりぎりのところで、主役とその他2人の登場人物となると
 その他のうちどちらかが犯人なわけです。
 
 そのため、作者のほうも苦し紛れに
 実は主役が犯人でした!とか

 全員が犯人でした!みたいな
 反則ギリギリの技を使ったりします。

 こうしたミステリ的な観点からすると
 『背後の足音』はやや裏切られ感があります。

 でもその分
 ハードボイルドな部分で読ませますのでご心配なく。

2012年2月15日水曜日

『薬害肝炎裁判史』



 (霧氷。ライオンの親子にみえませんか?)

 きょうは午前10時30分から福岡地裁で
 薬害肝炎の個別救済に関する期日があります。

 私が担当していた原告さんの和解も
 成立する予定です。

 ながくかかりました。
 その理由はこうです。

 被害者はある大学病院で心臓の手術を受け
 その際に、フィブリノゲン製剤の投与を受けました。

 いわゆる糊としての使用で
 臓器の接着剤として使用されたケースです。

 おなじようなケースが
 その時期にもう一例ありました。

 問題は、これらの使用時期が新製品の販売時期と
 かさなっていたことです。

 新製品では加熱処理がなされていたため
 肝炎ウイルスに感染する危険性は少なかったとされます。

 そのため、被告の国と企業から
 新製品が使われたとの反論がなされました。

 当時の執刀医の大学教授も
 国や企業側に立って、新製品だったと証言しました。

 執刀医がそう証言したのですから
 絶体絶命の危機です。

 でもわれわれは、執刀医の証言が他のカルテの記載と
 矛盾することをつぎつぎに明らかにしました。

 その結果、裁判所から和解勧告がなされ
 本日、無事に和解が成立する運びとなったわけです。

 というわけで手前味噌ですが、きょうのお奨めは
 薬害肝炎全国弁護団による『薬害肝炎裁判史』(日本評論社)。

 私もⅢ 運動、第1章 全面解決を求めて
 第1節 集団訴訟における運動の意義(218頁以下)

 第2章 薬害肝炎救済法の制定(298頁以下)
 を書いていますし

 Ⅵ 座談会(366頁以下)にも参加していますので
 興味のある方はご一読くださいませ。

2012年2月14日火曜日

『弁護士探偵物語 天使の分け前』 by.読書も好きな福岡の弁護士



 雨ですねぇ。
 一雨ごとに春めいてはきていますが。

 昨日は更新していません。
 のぞいてみてくれた方、すみません。

 さる団体の旅行で
 土曜から台湾に行ってました。

 そのご報告はまたのちほど
 ということで、本のつづき。

 きょうは法坂一広さんの『弁護士探偵物語 天使の分け前』
 (宝島社)。

 どこの書店でも平積みになっているので
 もうご存知でしょう。

 福岡県弁護士会の名簿を法坂一広、法坂一広…といいながら
 めくっていると、作者におもいあたります。

 それほど本名にちかいペンネームです。
 というか、巻末にも答えが載っています。

 うちわ褒めを警戒しつつも
 これはなかなかよくできていると思います。

 本文中でも明かされているとおりレイモンド・チャンドラーの
 私立探偵フィリップ・マーロウ・シリーズが下敷き。

 『さらば愛しき女よ』や『ロング・グッドバイ』など
 さいきんは村上春樹訳も出ているのでご存知の方もおおいでしょう。

 (もっとも清水俊二さんの訳と村上春樹さんのそれとではかなり
 世界がちがいます。だからこそ、新訳をする価値があるのでしょうが)

 シャーロック・ホームズなどと趣が異なり
 ハードなアクションも交えるためか、ハードボイルドものと呼ばれます。

 シャーロック・ホームズもののばあい、筋の読めないワトソンくんと
 対話しながら謎解きがすすみます。

 でもフィリップ・マーロウもののばあい、そんな「相棒」がいませんから
 対話がなく、どうしてもひとりでブツブツ言ってしまうことになります。

 すると客観的視点が弱くなり
 どうしても自己愛的世界がおおく語られることになります。

 またひとりで動きまわることになって
 あちこちに頭や体をぶつけます。

 その結果、相手から響いてくる音や反応をたよりに
 謎解きがすすむわけです。

 謎解きの手法が対話と異なり、対象に体ごとぶつかっていきますから
 話の展開がどうしてもハードボイルドにならざるをえません。

 というわけで『弁護士探偵物語』。弁護士ものではリアリティを欠く
 と考えたのか探偵ものをブレンド。

 薬師丸ひろ子さんの『探偵物語』を
 念頭においたわけではないようです。

 文体もレイモンド・チャンドラーを彷彿とさせます。
 これは立派。

 そもそも法律家の文章は読みづらい。『悪徳の栄え』事件のころから
 作家の先生がたからご批判をいただいているところです。

 これはやむを得ないところもあります。詩的な文体の文芸作品に対し
 二義的な解釈を排する文章を心がけているので。

 弁護士をやっていればいるだけ
 文章がスポイルされるわけです。
 
 そんななか、法坂さんの文章は先輩諸氏と異なり
 読みやすいと思います。

 最初のころこそ違和感をおぼえますが
 すぐに慣れ、作品世界にひきこまれます。

 法坂さんがよほどの天才でないかぎり、一行一行に
 相当の創意工夫が凝らされています。

 ですから1,470円の単行本も安いと思います。
 一読をどうぞ。

                ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳

2012年2月10日金曜日

『蜩ノ記』



 オリンパス事件をみていると
 会社の不正を暴き、是正することの困難を思い知ります。

 巨額の損失を「飛ばし」という手法で10年以上隠し続けた末に
 これを不正な粉飾会計で処理した事件。

 スクープとイギリス人社長の早期解任をきっかけに明るみに出て
 株価も急落、会長らは辞任、会社は上場廃止の瀬戸際に。

 ちょうどそのころ、私のところにも
 公益通報者保護法関連の相談がありました。

 法は、公益のために内部告発した人を保護する趣旨ですが
 実際には陰湿ないやがらせを受けているというものです。

 現代社会においてすらこうですから
 封建社会において藩の不正を正そうとするのは命がけ。

 葉室麟さんの『蜩ノ記』(祥伝社)はそんな様を描いたもの。
 さきごろ直木賞を受賞しました。

 葉室さんは九州の人なので
 豊後のさる藩が舞台(大分県の中堅企業といったところか)。

 山本周五郎の『樅の木は残った』(新潮文庫)によく似て
 汚名をきせられつつも、誇り高く生きる主人公の姿勢が気持ちいい。

 時代小説ですが、藩の中枢をめぐる謎解きがプロットになっていて
 ミステリ仕立てになっています。

 そしてこれまた
 主人公は蟄居(自宅謹慎)中ゆえ、身動きがとれません。

 というわけで
 きのうにひきつづきアームチェア・デティクティブ風。

 ワトソン(狂言回し)役はやはり
 不祥事を起こして懲戒処分中の檀野庄三郎。

 懲戒処分中?そういえば、この次に紹介予定は
 法坂一広さんの『弁護士探偵物語 天使の分け前』。

 現役バリバリのときはそれどころじゃないけど、懲戒されて
 ヒマになると、世の不正を暴く心構えとヒマができるのでしょうか?

 『蜩ノ記』を読みながら最近、悪代官と越後屋の
 「おぬしも悪よのう」みたいな場面を見ないなぁ、とか

 「お許しください。あれ~。」みたいな場面も見ないなぁ
 とか思いました。

 時代劇や時代小説をながらく見ていないのだから
 あたり前か?

 いや、『武士の一分』とか『たそがれ清兵衛』とかにも
 出てきませんね。

 藤沢周平さんらが
 時代劇をより清新なものに変えたせいなのかな?

2012年2月9日木曜日

『ビブリア古書堂の事件手帖』



 「宝満山は婚活パワースポットだった!」シリーズを
 書きながらも、何冊か本を読んだので、簡単紹介。

 まずは読みやすさから三上延さんの
 『ビブリア古書堂の事件手帖』(メディアワークス文庫)

 ミステリのうち
 アームチェア・デティクティブものです。

 つまり、名探偵ホームズにあたる人は
 何らかの事情でアームチェアから動けません。

 ジェフリー・ディーヴァーの
 『ボーン・コレクター』などが典型です。

 脊椎不随となったリンカーン(D・ワシントン)がベッドにいながら
 相棒とぶつかり・協力しながら事件を解決していきます。

 このホームズにあたるのが
 本好きで博識でくだんの古書店を経営する篠川栞子さん。

 もちろん美人で○○(セクハラといわれそうで、書けません)。
 男性読者としてはついつい肩入れしてしまいます。

 名探偵ホームズもそうですが、主役が寝ていて動けないとなると
 動ける相棒(狂言回し)のワトソン君が是非とも必要です。

 それがひよんなことで店を手伝うようになった
 俺こと五浦大輔くん。

 古書で「だいすけ」。なんかひっかかりません?
 このブログでも最近紹介した本と関係しています。

 舞台は北鎌倉
 古書に北鎌倉ですから、それだけでももう満足。

 というわけにもいかないので
 さわりをもうすこし。

 ミステリというからには謎があるわけですが
 それは古書の来歴に関するものなんですね。

 古書の書き込みや蔵書印などから
 推理を展開して謎を解いていく。

 問題となる古書のラインナップは
 つぎのとおり。

 夏目漱石『漱石全集・新書版』(岩波文庫)
 小山清『落ち穂拾ひ・聖アンデルセン』(新潮文庫)

 ウ”ィノグラードフ・クジミン『論理学入門』(青木文庫)
 太宰治『晩年』(砂子屋書房)

 しぶいですね。
 正直いって、私はどれも読んだことがありません。

 でも大丈夫
 読んだことがなくても読みたくなりますから。

 それぞれが独立した4話の短編集になってますから
 とても読みやすいです。

 ためしに読んでみて下さい。

2012年2月8日水曜日

雲仙の霧氷



 山の話ばかりしていると、山ばかり登っているようで
 気がひけるのですが、素晴らしい景色だったので。

 土曜日は、霧氷の雲仙岳に登り
 見事な霧氷を堪能してきました。

 雲仙岳は、長崎県の島原半島中央部にある火山で
 雲仙岳という山はなく普賢岳、国見岳、妙見岳などからなる山体の総称。

 霧氷は、氷点下の温度で、空気中の水蒸気が、樹木などに衝突して
 凍結することでできる、白色の氷のこと。

 蔵王の樹氷と異なり
 繊細な芸術という趣です。

 雲仙の霧氷は「花ぼうろ」と呼ばれ
 まさに真っ白な花々が咲き誇っているようでした。

2012年2月7日火曜日

雪の宝満山・登山~いろいろ~ by.山歩きの好きな福岡の弁護士



 (われわれの目の前を逃げたイノシシの足跡)

 きのうにひきつづき雪の宝満山
 の登山報告。

 猫谷川新道をさかのぼっていると
 一匹のイノシシが逃げていき、その足跡。

 私はいちばん後ろを歩いていたので
 残念ながら目撃できず。



 (吊舟岩のなかより)

 吊舟岩のなかを探検しました。
 ところどころ雪が入り込み、すべりやすく危険。

 じつはわれわれがおおはしゃぎするところを
 撮影した動画があるのですが、これはちょっと公開できません。

 山のなかは遠慮なく
 童心にかえれます。



 (つらら)

 山中いたるところに
 つららが下がっています。

 テレビゲームであれば
 落ちて攻撃してくるのでしょうが…。



 (氷れる難所が滝)

 つららが成長したものか
 氷れる難所が滝。

 きのうの写真の左手
 上方から撮影したもの。

 みなさんの頭のなかで
 3Dに組み立ててください。

 うまく組み立てられない人は
 現地まで足をお運びください。

              ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳

2012年2月6日月曜日

雪の宝満山・登山~難所が滝~



 きのうはいつものメンバーで
 雪の宝満山にのぼりました。

 この時期、お目当ては
 もちろん難所が滝。

 午前8時に西鉄二日市駅の東口に集合
 駅前のセブンイレブンで食料を調達。

 おやくそくどおり寝坊のため不着の人がいて
 予定より1人すくない人数で出発。 

 駅前の西鉄タクシーに分乗して
 筑紫野市の吉木・大石の先にある宝満山登山口へ。

 おそらく難所が滝をお目当てにしたとおぼしき
 ツアー・バスがすでに停車していました。

 むろんわれわれも
 目指すところはおなじです。 

 沢沿いの猫谷川新道をのぼりました。
 3合目のあたりから残雪がちらほら。

 吊舟岩のなかを探検したあと
 金の水、普池の窟を経て長崎鼻へ。

 下りになりすべりやすくなったので
 アイゼンを装着。

 そこから先は
 やはり難所が滝を目指す人々で大混雑。

 長崎鼻の坂をくだったところに分岐があり
 左折して急坂を下るのが近道。

 ですが、われわれは
 もうすこし三郡山方面へ足をのばし迂回することに。

 迂回先の分岐で昼食。
 ここも交通の要衝のせいか、やはり大混雑。

 雪中寒いながらも
 わいわいがやがやとにぎやかな昼食でした。

 そこで遅刻していたメンバーと電話連絡がとれ
 難所が滝で合流することに。

 昼食後、宇美町方面へ
 坂をくだります。

 ここでも多くの人々と
 行き交いました。

 途中、どうでしたか?
 と訊くと、いや、人が一杯ですと。

 しばらく行くと
 左前下方に白く輝く壁があらわれました。

 難所が滝です。
 あちこちで歓声があがります。

 ほんとうに美しい滝です。
 すばらしい!

 しばらくまって、もう無理かと出発したところ
 ようやく遅参のメンバーと行き会いました。

 かくて
 全員そろって無事に下山したのでした。

 むろん独身メンバーもいたので
 婚活スポットめぐりもしました。
 
 みなさんも、いかが?

2012年2月3日金曜日

役の行者 by.山歩きの好きな福岡の弁護士



 きょうは節分ですね。
 節分とは、季節を分けること。

 つまり、季節の始まりの日の前日のこと。
 つまり、明日は、立春です(なので、雪よ、やめ!)。

 季節の変わり目には邪気(鬼)が生じるんですね。
 (たしかに、風邪をひきやすい)

 それを追い払うために
 悪霊ばらいの行事が必要なわけです。

 ふつうは豆まきですね。
 「鬼はそと!福はうち!」

 鬼に豆をぶつけることにより、邪気を追い払います。
 なぜなら、マメ=魔滅だから(あはは)。

 でも福岡県の太宰府市や筑紫野市あたりは
 ほんとうなら豆まきはしなくてもいいくらいです。

 なぜならまず
 フクオカケン=「福多かけん」だから(あはは)。

 それからさらに太宰府市や筑紫野市は
 北東の方角を竈戸神社が守っているから。

 鬼は北東=丑虎(うしとら)の方角からやってくるんですね。
 だから、鬼は牛の角をもち、虎のパンツをはいています(あはは)。

 ほんとうですよ!京都と比叡山・延暦寺の関係もおなじ。
 大宰府(都府楼)もこれにならったわけです。

 延暦寺をつくった伝教大師・最澄も
 唐にわたる前に、宝満山で修行をしています。

 中宮跡から男道をいくと、すぐ左手に羅漢道がわかれ
 そこをいくと、伝教大師が修行した窟があります。

 というわけで、霊験あらたか。
 ですが、念のため、豆まきをすることまでは止めません。

 さて、宝満山は「婚活パワースポットだった!」シリーズも
 きょうで、いよいよ最終回。

 中宮跡から石段方向へくだらないで
 ちょっと左手にいくと行者道があります。

 行者道をくだると鳥越(鳥追)峠に出ます。
 そこをまっすぐに登りかえすと、愛嶽山(おたけさん。432m)。

 愛嶽神社の祠があって、左手(向かって右)に
 役行者(えんのぎょうじゃ)の石像が写真のとおり。 

 本名は役小角(えんのおづの)。
 飛鳥時代から奈良時代に実在した呪術者。

 修験道の開祖。葛城山・金剛山、熊野・大峰山などで山岳修行を重ね
 吉野(金峯)山で金剛蔵王大権現を感得しました。

 平安時代から、山岳信仰・修験道が人気となり
 役行者と呼ばれるようになりました。

 八犬伝にも登場するなど
 伝説的なパワーを発揮します。

 役≒縁なので
 彼も婚活・婚後パワーを授けてくれることでしょう。

 ちなみに、わが事務所では、私の担当事務局になると
 結婚か出産かのご利益があるという伝説があります。

 これまで担当になった事務局は担当期間中に
 ほぼみな結婚か妊娠をしました。 

 おそらく私が宝満山に登ることによって
 宝満山のパワーをなにがしか持ち帰っているためでしょう。

 4月から異動があるのですが
 どうやらその期待もあるようです。
 
 かくてまた
 宝満山に登らねば!(うふふ)

              ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳

2012年2月2日木曜日

袖すり岩



 神功皇后が子どもを産んだので宇美(ウミ)町
 おしめを替えたので志免(シメ)町。

 ほんとうでしょうか?
 ミスチルの歌(Sign)みたい

   僕に向けられるサイン
   もう何ひとう見落とさない

 って感じですね。
 かくなるうえは

 日本一子育てのしやすい町に
 なってほしいと思います。

 この伝でいくと田主丸町あたりが
 朝倉南ちゃんの出身地といえそうです。

 なぜだかピンと来ない人は地図をご覧ください。
 朝倉南ちゃんを知らない人は『タッチ』を読んでください。

 というわけで
 「袖すり岩」。

 「袖すり合うも他生の縁」にちなみ
 縁結びの名所です。

 9合目、竈戸岩への分岐の先
 「馬蹄石」のちょっと手前にあります。

 左右に巨岩がそそりたち
 1人で通るのがやっとという狭き登り道。

 そこをなんとか
 2人で登ることをお奨めします。
  
  狭き門より入れ、滅にいたる門は大きく
   その路は廣く、之より入る者おほし

 そのようにイエスさまもおっしゃっていますので。
 (『聖☆おにいさん』の読み過ぎか?)

 …と、かなり信じるしかない話がつづきましたが
 心理学的な裏付けをすこし。

 宝満山のような岩だらけのところを2人で登ると
 「吊り橋効果」で、愛が深まることが期待できます。

 吊り橋効果は
 つぎのような実験で証明されています。

 男性を2群に分け、一方のグループでは、つり橋を渡る前に
 他方のグループでは、渡っている途中で

 女性が「調査結果を知りたければお電話ください」
 と言って電話番号を渡します。すると…

 前者で電話をかけてきた人は37%
 後者では65%という結果に。

 これは“つり橋を渡るため”のドキドキを
 “女性が好きなため”のドキドキと脳が勘違いするため。

 というわけで、宝満山の岩場を彼女・彼氏といっしょに
 ドキドキすることをお奨めします。

 【使用上の注意】
 
 ただし、そうやって成就した恋愛は
 長続きしないという説もあります。

 むかし、キアヌ・リーブスとサンドラ・ブロックで
 『スピード』という映画がありました。

 時速50マイル以下になるとバスが爆発するという危機のなか
 2人が愛しあうに至るというストーリー。

 たしか事務所のみんなと観に行ったと思いますが
 女性事務局のみなさんが口々にこういってました。

 「あの2人は長続きしないわよね~」
 たしかに。

 (続編『スピード2』では、キアヌは出演せず
  サンドラとは別れた設定になっていました。)

2012年2月1日水曜日

竈門岩 by.山歩きの好きな福岡の弁護士



 宝満山にけっこう登っている人でも
 けっこう知らないのではないでしょうか?

 九合目の立標のちょい先を
 左に入ります。

 道標もわかりにくく
 道もはっきりしないため、見過ごしがち。

 足場の悪い道をすこし登るとあります。
 竈戸岩。

 写真のとおり「仙竈」と書かれており
 これもやはり博多聖福寺の仙涯さんによるもの。

 3つの巨岩が
 むかしのカマドの形をしています。

 さいきんは火力のつよいガスコンロが主流ですが
 すこしまえは薪をつかっていました。

 薪で煮炊きをしようとすれば、石をこのような形に組み
 その上に鍋をかける必要があります。

 八百万(やおよろず)の神に、かまどの神さまがいて
 火を使う場所に祀られます。

 火の神であるとともに
 農業や家畜、家族を守るともされます。

 竈→家庭料理→家族団らんとイメージはつながります。
 かまどの神さまが健在であれば孤食などとは無縁でしょうが。

 宝満山は別名、竈門山といわれますが
 この岩が名前の由来とも。

 もっとも福岡藩の儒者・貝原益軒は
 竈門山の由来について他説を主張(『筑前国風土記』)。

  「山上にいつも雲霧がかかり
  竈で煮炊きしているように見えるので」

 この説もあなどれず
 『拾遺和歌集』にこんな歌が。

   春はもえ 秋はこかるる かまと山
   
         かすみも霧も けふりとそ見る

                       元輔

 詞書によると、元輔が筑紫へ下り
 竈門山の麓に宿泊したおりのこと。

 道ばたの木に「春はもえ…」と書き付けてあったのを見て
 下の句をつけたとか。

 元輔は清少納言の父・清原元輔だそう。
 肥後守として赴任した際のことでしょうか。

 竈門神社から左手の坂をくだると
 九州登山情報センターがあります。
 
 そこからとちょっと車道をのぼると
 宝満山登山口。鳥居が建っています。

 ふつうはすぐに登りはじめるのですが
 もう5メートルほど車道をのぼります。

 すると右手に歌碑があり
 元輔の歌が書かれています。
 
 竈門岩に戻ってお隣には
 亀の頭を乗せたような巨岩「亀岩」が。

 子孫繁栄と長寿を祈りましょう。
 左手からぐるっとまわって登ることもできます。

 また竈門岩から少しくだったところに
 「益影の井」があります。

 手前の説明板に
 こういう解説が。

  宝満山中には、五所秘水といって、霊水が湧き出る泉があり
  その中で一番神聖な泉が益影の井です。

  筑前国族風土記に「人がこの水に影を写すと、老顔も<益々>
  若く少壮の如く写るので益影の井と名付けられた」と

  また「応神天皇が粕屋郡宇美町で御誕生の折に
  この水をわかして産湯にされた」など

  その外、雨乞いの祈祷水など
  昔より信仰と伝説に富んだ霊験あらたな若返りの泉であります。

 この水をわかした場所が
 竈門岩だとか。ほんとうでしょうか?

 ま、そういうこともあってか、竈門神社には玉依姫のほか
 神功皇后と応神天皇も祀られています。

 神功皇后が宇美町で応神天皇を産み(ウミ)
 志免町でおしめ(シメ)を換えたのだとか。

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               ちくし法律事務所 弁護士 浦田秀徳